2003年01月29日23時37分掲載  無料記事
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新規参入のマレーシア華字紙「東方日報」からオピニオン面消える

 【ディリ29日=和田等】マレーシアでこの1月に発行されたばかりの華字紙「東方日報」1月28日付の号からオピニオンのページが姿を消したーー。 
 
 マレーシアの独立系インターネット新聞「マレーシア・キニ」が伝えたところによると、「東方日報」にはその前日発行の号までオピニオンのページがあり、5本のコラムと社説、風刺漫画がそれぞれ1本ずつ掲載されていた。 
 
 コラムの執筆者の多くは、別の華字紙「南洋商報」と「中国報」を発行するナンヤン・プレス・ホールディングスが、与党連合の一角をなす「マレーシア華人協会」(MCA)による株式取得で、その傘下に入ったのに抗議し、執筆をボイコットした書き手によって構成されていた。 
 
 当時、MCAによるナンヤン・プレスの株式取得の背景には華字紙の統制・管理を目的とするMCAの政治的意図があるとの激しい批判を呼び、多くの編集者が両紙を退職、「南洋商報」の販売数が急激に落ち込むなどの反応が出た。 
 
 「東方日報」のコラムニストのひとり、ヨン・カイピン氏によれば、新規参入の同紙はほかの華字紙と比べてニュースを扱う範囲などに弱点があるが、ビジネス情報を扱うデスクとオピニオンのページには強力なチームが配置されていたという。つまり、オピニオン・ページは同紙のひとつの「売り」だったのだが、これが紙面から外されたのは「新聞発行の許認可権を持つ内務省とライバル紙から執拗な圧力がかかったため」(ヨン氏)とみられている。 
 
 マレーシアでは「南洋商報」と「中国報」のほかに、「星洲日報」と「光明日報」が有力華字紙として発行されているが、後者2紙はMCAのリン・リオンシク総裁(運輸相)にきわめて近い人物といわれるティオン・ヒューキン氏が実質上のオーナー。 
 
 ティオン氏はサラワク州の「木材王」ともいわれるビジネスマンで、同じくサラワク州で木材事業を手がける「東方日報」のオーナー、ラウ・フイカン氏とはビジネス上のライバルとされる。ラウ氏はサラワク州で発行される華字紙、英字紙、マレー語紙の3つの日刊紙も傘下に置いている。 
 
 中国語の雑誌「プルスペクチフ・ペダス」の編集長もつとめる前出のヨン氏は、「『東方日報』の読者は、同紙が非常に慎重に記事を掲載していて政府やその政策を正面から批判するようなことはしていないということを知っているし、テーマによってはほかの華字紙のオピニオンの方が批判的な論調であることもあった。しかし、なぜ内務省は『東方日報』だけを狙い撃ちしたように圧力をかけるのか理解できない」と語っている。 
 
 同氏はまた、「新たに発行された新聞に既刊の新聞とは違う選択肢を求めている読者に対して、オピニオンのページをはずすよう圧力がかかり、その通りになったのあれば不公平なことが起こったといわざるをえない」と遺憾の念を表明している。 
 
 これに対して「東方日報」のプア・ユーライ編集長は、オピニオン・ページをなくしたのは紙面編成の「再調整」をおこなった結果だとのみ説明し、当局からそうするよう圧力がかかって実施したかどうかについてのコメントを拒否した。 


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