2003年03月01日03時19分掲載  無料記事
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ロシア外相、米英決議案に「拒否権の用意も」 米に最悪のシナリオも現実味

 【東京28日=稲元洋】ロシアのイワノフ外相は訪問先の北京で27日、アメリカ、イギリス両国が対イラク攻撃に踏み切るために来週末にも採択するとみられている安保理決議案について、ロシアは「国際社会の安定」のために必要であれば、拒否権を行使する準備があると記者会見で語った。ヤフーニュースなどが報じた。 
 
 イワノフ外相は「拒否権を行使するにあたっては、そのことの意味の重さは十分考えなければならない。拒否権行使は国際社会の平和と安定のためにのみ使われるべきだ」としたうえで、「ロシアは直接的であれ間接的であれ、軍事力を行使してイラク問題を解決しようとするいかなる新たな安保理決議も好まないだろう」と述べた。 
 
 中国訪問中のイワノフ外相は27日、中国、ロシアともに「イラクに対する戦争は避けられる」との声明を発表している。 
 
 アメリカは、安保理で拒否権を持つアメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国のうち、フランスの決議案行使は不可避と判断しつつ、中国、ロシアについては棄権を選択させるよう外交圧力をかけてきたが、フランスとロシアが拒否権行使し、中国は拒否権行使または棄権というアメリカにとって最悪のシナリオも現実味を帯びつつある。 
 
 
 アメリカの決議案をめぐる戦略は、フランスが拒否権を行使したとしても、中国、ロシアを棄権または賛成させ、拒否権を持たない非常任理事国10カ国のうち反対の姿勢を覆せそうにないドイツ、シリアを除く残り8カ国の賛成を取り付け、フランスを孤立化させることにあった。 
 
 安保理決議の採択には非常任理事国を含めた15カ国のうち9カ国が賛成し、さらに5常任理事国が拒否権を行使しないことが条件。 
 
 アメリカの狙いは、フランスの拒否権によって決議案が採択されなくても、15カ国中9カ国が賛成したという第一条件を満たした事実を残し、「フランスの頑迷さで決議案はつぶされたが、国際社会の大勢はイラク攻撃を支持した」という形を作ることとみられていた。 
 
 非常任理事国の中で新決議案反対を貫くとみられているのはドイツと「アラブ代表」のシリア。賛成新決議案支持に回るのが確実とみられているのはスペインとブルガリア。しかし、フランスに加え、ロシアが拒否権を行使、中国が少なくとも棄権することが確実な情勢となれば、新決議案への賛否を明確にしていないカメルーン、ギニア、アンゴラ、チリ、メキシコ、パキスタンの残り6非常任理事国の中から反対または棄権に回る国が2カ国以上出る可能性は高まる。 
 
 そうなった場合、アメリカにとっては「15カ国中9カ国の賛成」という第1条件もクリアできなかったという結果になる。 


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