2004年04月05日10時45分掲載
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イラクの4都市で同時多発的に発生 バクダッド陥落後の最悪事態
【ロサンゼルス4日=戸田邦信】イラクの4つの都市で4日、イスラム教シーア派の強硬派民兵組織や支持者が、米、英、スペイン、イタリアなどイラク駐留軍と相次いで衝突した。これまでに米軍兵士は8人、エルサルバドル兵士1人が死亡した。イラク人にも多数の死傷者が出ている。昨年4月9日のバグダッド陥落で市内で大規模な略奪・放火事件が起きて以来の最悪の騒擾事件となった。米英主軸の連合軍は、6月末にイラクへの主権移譲を予定しているが、この日の混乱は、イラクの治安安定の行方に大きな疑問を投げ掛けるものだ。
4日の騒乱は、3日にイスラム教シーア派の対米強硬派指導者ムクタダ・サドル師の側近が、イラクに帰還した他のシーア派指導者を殺害した容疑で拘束されたことと、サドル師の週刊紙が過激思想を鼓吹しているとして、3月末に発行停止処分になったことへの怒りが原因だ。
4日のロサンゼルス・タイムズ紙(電子版)によると、イスラム教シーア派の聖地ナジャフでは、サドル師の支持者5000人が参加し、街頭抗議デモを繰り広げた。この際、スペイン駐屯地にデモ隊が発砲、連合軍も応戦した。米兵1人、エルサルバドル兵士1人が死亡、連合軍兵士9人が負傷した。イラク人を含めると死者は少なくとも20人、200人が負傷した模様。
スペイン駐留軍は約1300人。エルサルバドル軍は中米派遣軍として、スペイン軍の指揮下に入っているため、同じ駐屯地に駐留している。3月のマドリード列車爆破テロ事件に絡み、先の総選挙で勝利した新政権は、国連の主導下でなければ軍を撤収すると公約している。
イラクでは、人口2500万人中、シーア派は60%を占めるが、サドル師は連合軍のイラク占領に反対する急進派で、次期政権で発言力を確保しようとする他のシーア派とは一線を画する。
バグダッド周辺では、サドル師の武装民兵が警察署や政府建物を占拠した後、衝突が起きた。この衝突で、米兵7人が死亡、少なくとも24人が負傷した。現場では、連合軍の軍用車2台が炎上。4日夜、市内で現場に向かう連合軍の戦車も目撃された。
このほか、南部の都市ナッシリアでは、サドル師の側近拘束に抗議する民兵とイタリア駐留軍が交戦、イタリア兵士1人が負傷した。また南部のアマラでは、英国部隊が、デモ隊と衝突した。負傷者などは不明。
また3日には、別の敵対行動で海兵隊が襲撃され、2人が4日までに死亡した。この結果、昨年3月の開戦以降、米軍兵士の死者数は610人達した。
イラクを占領統治する連合国暫定当局(CPA)のブレマー行政官は4日、イラク暫定内閣の国防相にアリ・アラウィ貿易相(イスラム教シーア派)を、また新設の情報機関、国家情報局長官にはトルクメン人の旧イラク軍元少将ムハンマド・アブドラ・シェフワニ氏を任命したばかり。主権移譲のプロセスを加速させたいCPAは、4日の衝突に衝撃を受けている。
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