2004年06月11日06時06分掲載
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ネオコンにも冬の時代? イラク情勢混迷で風当たり強まる
【ロサンゼルス10日=戸田邦信】ブッシュ米大統領の対イラク戦争の理論的支柱となったネオコン(新保守主義派)グループが、最近のイラク情勢の混迷から、ワシントン政界での影響力を失いつつある。イラクを拠点にアラブ世界に民主主義をうちたてると壮大な理想を描いたネオコンだが、イラクの戦後復興が混乱するなど、目算が狂い、大きく面目を失う事態になっている。
10日付の米紙ロサンゼルス・タイムズ紙は、一面で「ネオコンにとって困難な時期」と題して、国務省や国防総省内で、ネオコンへの風当たりが強くなっていると報じた。
ネオコンの一人で、FOXテレビの常連でもあるケネス・アーデルマン元国連大使は「イラク情勢が、予定通りに進んでいない」ことが、ネオコンの力が落ちている原因だと認めた。
他のネオコンのメンバーは、ブッシュ大統領が、イラク情勢のために、再選に失敗すれば、これは1期限りだったカーター大統領以来の最悪の事態だと指摘。その場合、この混乱をつくったとしてネオコンへの批判が強まるだろうとみている。
ブッシュ大統領は、01年の9・11米中枢同時テロ前までは、他国家に介入し、国家再建に従事することに反対していたが、テロ事件以降、ネオコンの理論を受け入れた。
ブッシュ政権に影響を与えたネオコンは、ポール・ウォルフォウィッツ国防副長官、ダグラス・フェイス国防次官、ルイス・リビー副大統領首席補佐官、リチャード・パール元国防政策委員会委員長、雑誌編集者のウィリアム・クリストル氏らだ。
イラクの戦後復興の遅れで、ネオコンが、逆にブッシュ政権を“批判”する事態も起きている。パール氏は、イラクへの主権移譲(6月末に予定)をもっと早い時期に実施すべきだったと主張。クリストル氏は、ラムズフェルド国防長官が、十分な軍隊を派兵せず、治安問題を悪化させたと不満を抱いている。
つまり、ネオコンは、外交政策をめぐり「素晴らしい台本を書いたのに、これが、間違った監督の手に渡った」と思っているらしい。
同紙は、混迷のイラク情勢に加え、ネオコンと密接な関係のあった反体制組織「イラク国民会議」のチャラビ代表(イラク統治評議会元メンバー)の権威失墜で、ネオコンは、大きな痛手を受けていると分析する。
チャラビ氏は、フセイン政権打倒のため、大量破壊兵器などをめぐり、開戦前、虚偽の情報を米国に流したとされる。また最近では、米国の高度な秘密情報をイランに流したスパイでは、との疑惑も浮上している。
特に、フェイス次官は、米連邦捜査局(FBI)が捜査中のチャラビ氏と、実懇の間柄とされる。またイラクの戦後復興計画のお粗末さも批判されており、辞任のうわさが広がっている。
昨年までは、再選後の国務長官との下馬評もあったウォルフォウィッツ副長官も、イラク情勢が災いし、到底、上院の長官指名承認が得られるわけがないとして、共和党議員からもそっぽを向かれている。
肝心のブッシュ大統領は、依然、中東での民主主義の建設というネオコンの目標を支持する発言をしている。このため、ネオコンは、イラクの新暫定政権が、イラク国民の支持を獲得し、治安を安定させれば、米国の政策が維持されていることになり、ネオコンの地盤沈下も回復できると見ているようだ。
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