2004年08月16日04時17分掲載  無料記事
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チャベス大統領の信任問う国民投票始まる 15日夜に大勢判明、ベネズエラ

【東京16日=ベリタ通信】南米の産油国ベネズエラで15日午前6時(日本時間同日午後7時)から、2007年までの任期期間を残したチャベス大統領の信任を問う国民投票が始まった。1400万人の有権者が信任か罷免かの意思表示をすることになる。大統領の罷免が確定すれば、30日以内に新たな大統領選が行われる。15日夜にも大勢が判明する。チャベス大統領は15日付の米紙ロサンゼルス・タイムズに対し、罷免の場合は、大統領候補として再出馬すると語った。 
 
 今回の投票は、「ベネズエラに民主主義を実現する」という米国の全面的支援を受けた同国の右翼勢力の圧力で実施が決められた。結果的にチャベス大統領が譲歩した形だ。すでに、首都カラカスをはじめ国内では、米州機構(OAS)やカーター元米大統領など、国際社会の100以上の団体や個人が選挙監視を行うことになっている。 
 
 チャベス氏は、1992年、クーデター未遂を首謀し入獄。しかし、98年の大統領選で圧勝し、憲法改正後の00年大統領選(任期6年)でも大勝した。国民の大半を占める貧困層が支持基盤。規定では、罷免には、チャベス氏が00年大統領選で得た約376万票を上回る支持が必要。 
 
 米国は、同国の人口の80%を占める貧困層の救済を訴えるチャベス大統領の“ボリーバル主義革命”に対して、2002年4月には右翼勢力による大統領の暗殺まで想定したクーデターを支援した。 
 
 その際、逮捕された首謀者の軍人たちが、中南米の歴代軍事政権の軍人に治安訓練を施してきたスクール・オブ・アメリカズ(SOA:ジョージア州フォート・ベニング)の出身者であったことも暴露された。 
 
 こうした事実を報じない世界のメディアは、一貫して暴力対立の回避に焦点をあて、ボリーバル主義憲法の表現の自由の規定に基づき、反対派にも「反対する自由」を保障するチャベス大統領を、「独裁者」と報じてきた。 
 
 スペインの日刊紙エル・ムンドによると、約1週間前に、チリの首都サンチャゴ・デ・チリにCIAの南米地域責任者のウリアム・スペンサー氏とコロンビア、エクアドル、ブラジル、ペルーの各国責任者が一堂に会し、ベネズエラ情勢について協議した。 
 
 その目的は、周辺国へのチャベス大統領による“ボリーバル主義革命”の波及をいかに食い止め、チャベス氏を「無力化」することだと報じた。 
 
 これまでも米国は、チャベス大統領を“キューバのフィデル・カストロ(国家評議会議長)と瓜二つの複製”だと口汚く罵ってきた。ベネズエラ国内の混乱の理由を、「キューバと同じ道を選択しているからだ」と扇動してきた。 
 
 しかし、CNNは、「もし、キューバのような社会になって人間的な生活が送れるのなら、見捨てられてきた私たちにとっては、それでも構わない」というベネズエラのスラムの住民の声を紹介している。 
 
 ベネズエラは、米国にとって第二の石油輸入先である。チャベス政権は、米国への石油の輸出は再三保証すると明言してきた。その一方で、米国の経済封鎖下にあるキューバへは、米国の警告に屈せず、キューバの医療・教育支援とバーターで石油輸出を行った。最貧国がひしめくカリブ諸国へのエネルギー支援も開始した。アリスティード政権崩壊後のハイチには、キューバに続いて医師団を派遣した。 
 
 ドイツ紙ユンゲ・ベルトによると、国民投票の結果いかんにかかわらず、ボリーバル主義革命防衛委員会(シルクロ・ボリアーノ)は、「権力を手放すべきではない」とし、あくまで革命の正当性を守るべきだという考えだ。同紙は、あらゆる難癖と口実を用いて政権転覆を図るのが米国の常套手段であり、チリのアジェンデ政権への軍事クーデターをはじめ歴史が示している、と伝えている。 


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