2004年08月30日23時21分掲載
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「米国は政治目的でイラクを占領した」 元五輪の王者カール・ルイスがブッシュ批判
【サクラメント(カリフォルニア州)29日=田中祥子】29日付の英日曜紙オブザーバーによると、かつてオリンピックの陸上競技で大活躍した米国のカール・ルイスさんが、アテネ五輪に参加したイラクとアフガニスタンのチームを大統領選再選のためにテレビコマーシャルに利用したブッシュ大統領を批判した。
カール・ルイスさんは、1984年のロサンゼルスから96年のアトランタ五輪を通じて9個の金メダルを獲得した。アテネ五輪の開会式では、聖火ランナーとして参加した。
ブッシュ大統領が「イラクとアフガニスタンがアテネ五輪に参加できるのは、自分の外交政策の成果である」と8月13日から放映を始めた選挙戦用のテレビ広告で述べたことについて、「私は、とても不誠実なことだと感じた。米国は、1980年のモスクワでのオリンピックを当時のソ連によるアフガニスタン侵攻を非難、ボイコットした。しかし、今度は逆にアフガニスタンを攻撃したのは、おかしな話だ」と述べた。オブザーバー紙はアテネで報道された内容を伝えた。
ルイスさんは、「もちろん、米国は政治目的のためにイラクを侵略、占領した。だから、私はブッシュ大統領が個人の政治目的のためにテレビ広告に利用したことについて、イラク選手たちが腹を立てたのは、よく理解できる」「選手やコミュニティーを支援するのは構わないが、政治上の点稼ぎに使うのには同意しかねる」と述べている。
イラクのサッカーチームは、今回のオリンピックで準決勝まで進出したが、選手たちは米国のテレビで流されているブッシュ大統領の宣伝に対して嫌悪感をあらわにし、イラクに駐留する米軍を解放者ではなく、占領軍とみなしているという見解を明らかにした。
ブッシュ大統領は、イラクチームが決勝進出を果たした場合にはアテネ訪問も考えていたとされるが、イラクは準決勝戦で敗退した。
カール・ルイス選手は、ロサンゼルス五輪で36年ベルリン五輪のオーウェンス選手以来となる百メートル、二百メートル、四百メートルリレー、走り幅跳びの4種目制覇を成し遂げ、ソウル、バルセロナでも金メダルを2つずつ獲得。そして1996年のアトランタ五輪では、35歳という年齢にもかかわらず幅跳びで金メダルを獲得し、史上2人目の同一種目4連覇となった。97年に競技を引退し、カリフォルニア州に移り俳優に転身している。
一方、ブッシュ大統領のコマーシャルは五輪のシンボルを許可なく使ったとして、国際オリンピック委員会(IOC)からも非難された。25日のロイター電は「オリンピックの名前を許可もなく、選挙広報に使う傲慢さは信じられない」というIOCメンバーのコメントを報じている。
パウエル米国務長官もオリンピックの閉会式に出席する予定だったが、出発の数時間前になって急きょギリシャ訪問を取りやめた。各種メディアによれば、アテネでの反米デモなどの恐れがあり、混乱をもたらすことも予想されたからという。
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