2004年12月14日10時46分掲載
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アンワル元副首相 マレーシアの治安法撤廃目指す
【クアラルンプール14=和田等】マレーシアの野党指導者アンワル元副首相は、国家の安全を脅かしたと当局が認定した者を裁判なしで無期限に拘束することを認めている国内治安法の廃止を目指して運動を始めた。当局が同法を適用してここ数年の間に、イスラム過激派のメンバーと見なした容疑者数十人を現在も裁判なしで拘束しており、元副首相はその状況に対する警鐘も鳴らしている。
AP通信によれば、インドネシアから帰国したアンワル元副首相は11日、約500人の人びとを前に「国内治安法は抑圧的かつ過酷な法律で、当局はマレーシア人の間に恐怖を植え付け、反政府的な言動を抑えこむために同法を乱用している」と主張した。同法に反対する声を広げるため、セミナーや集会を開催するなどのキャンペーンを6ヵ月にわたって展開すると宣言した。
国内治安法の廃止を求める運動を展開する野党指導者や人権活動家らは、1960年以降、反政府的言動をとった政治家や反政府活動家をはじめ、同法に基づく拘束を受けた人は1万人以上に達すると主張する。アンワル元副首相自身、1998年にマハティール前首相に解任された後、大規模な反マハティール・デモを組織したため、一時国内治安法に基づく拘束を受けた。元副首相は学生運動を展開していたときにも同法による拘束を受けている。
マハティール前首相ににらまれた元副首相は、職権乱用と異常性行為を行なった罪状で起訴され、合計15年の判決を受け、6年間の刑期に服した。しかし、9月に連邦裁判所(最高裁に相当)が異常性行為の罪状については逆転無罪を言い渡したため、自由の身になった。
釈放後、東南アジア諸国では初の訪問先としてインドネシアを訪問した。元副首相は、インドネシアの民主主義の進展ぶりに感銘を受け、マレーシアにおける人権の向上をめざす措置のひとつとして、国内治安法の廃止を求める運動に乗り出したようだ。
現在マレーシアでは、東南アジアにネットワークを持つイスラム過激派「ジェマー・イスラミア」やマレーシアにおける連携組織のメンバーだとして拘束されている約60人をはじめ、100人以上の容疑者が国内治安法に基づいて裁判を受けることなく、ペラ州タイピンにあるカムンティン拘置所に拘束されている。
アンワル元副首相は、これら容疑者を裁判にかける証拠がないのであれば、即刻釈放すべきだ、と当局に要求。同元副首相はまた、8日にカムンティン拘置所内で起こった暴動に対する透明性の高い調査を実施するよう求めている。この暴動では同拘置所の収容者12人と看守8人がけがを負った。
この暴動について当局は、収容者の独房の抜き打ち検査を実施した係官に対して収容者が投石を行なったことが、看守による暴力的な報復を招く引きがねになったと説明している。
カムンティン拘置所でこうした暴力的行為が起こったという報道が行なわれることは非常に稀なこともあり、今回の一件が注目を集めることになった。
地元紙ニュー・ストレーツ.タイムズによれば、当局は、収容者らが手製のナイフや金属の棒、折畳式ナイフなどの武器を所有していたほか、携帯電話を13台持っていたと発表した。携帯電話については収容者の家族が差し入れの衣類の中に隠して独房内に持ち込んだ可能性が高いとの見方を示している。
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