2005年01月23日01時00分掲載  無料記事
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妊婦自らが竹片でへその緒切り出産 アチェの津波災害で深刻な助産婦不足

 【東京23日=ベリタ通信】インドネシア・アチェ州に未曾有の災禍をもたらした大地震・津波から23日で4週間。その間、避難民キャンプなどで厳しい生活を送る妊婦たちが今、深刻な問題に直面している。臨月を迎え産気づいた妊婦たちが不衛生な状況下で出産を余儀なくされているのだ。しかも、出産に立ち会うはずだった助産婦の多くが津波で死亡したため、妊婦の中には仕方なく、竹片を使って自分でへその緒を切り、出産する者まで出ているという。 
 
 22日付のバンダアチェ発のAP通信(電子版)によると、国連人口基金は、今回の災害で幸い難を逃れたインドネシア人の妊婦はアチェ州を中心に約1万5000人に上り、そのうち約800人が臨月を迎えていると推測している。こうした妊婦の中には働き手の夫を津波で亡くした者も多い。  
 
 また、インドネシア助産婦協会によると、アチェ州で働いていた助産婦のうち約30%に相当する1650人が津波にのまれて死亡した。難を逃れたとはいえ、助産婦たちの中には災害の後遺症から立ち直れないうえ、出産に必要な器具をすべて失い仕事を再開できない者も多い。このためキャンプ中などで出産を迎えた妊婦たちは助産婦の介添えがないまま、赤ん坊を産んでいるという。 
 
 最も厳しい環境に置かれた妊婦の中には、へその緒を切る道具がないため、自分で竹片を探してきて、これを使い切っているケースも出ているという。 
 
 不足しているのは助産婦の数だけではなく、産まれてきた赤ん坊をつかわせる産湯や体を洗う石けんなど出産に最低限必要なものも不足し、妊婦たちは不衛生かつ劣悪な状況での出産を余儀なくされている。 
 
 そうした中、州都バンダアチェの避難民キャンプで今、助産婦であるレビタさんとシュクリアさんの姉妹が、急ごしらえの診療所を設けて妊婦たちの世話を続けている。レビタさんは2週間前に、電気もない薄暗いテントの中での出産に立ち会った。「石けんだけでなく、産後の母親や生まれた赤ん坊の衛生状態を保つものは、一切なかった」とレビタさんは表情を曇らせるが、「新しい生命の誕生は素晴らしい。当分の間、ここで出産を助け、妊婦たちの世話をしたい」と話している。 
 
 レビタさんによると、産まれてきたのは女児で、アラビア語でテントを意味する「ザキラ」ちゃんと名付けられたという。 


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