2005年01月27日07時48分掲載  無料記事
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激しい衝撃走り、横滑りする車両 ロス郊外の通勤列車事故で210人死傷

【ロサンゼルス26日=戸田邦信】何かにぶつかった激しい衝撃を感じた。早朝の車中でうたた寝をしていた乗客に戦慄の表情が走る。叫び声、ディーゼル車から漏れた燃料の臭いも立ち込めた。「列車は、線路上の何かにぶつかり、引きずっているのを感じた。突然車両が傾き、急停止した」−−。26日、小雨の煙るロサンゼルス郊外のグレンデールで起きた公共輸送機関「メトロリンク」の通勤列車脱線・転覆事故。これまでに少なくとも乗客ら10人が死亡、200人以上が負傷する惨事になった。事故原因は、自殺願望の25歳の男性が、死に切れず、線路上にSUV車を放置して逃げ出したのが原因で、関係者に衝撃を与えている。 
 
 26日午前6時すぎ、ロサンゼルス郊外のグレンデールで、公共輸送機関「メトロリンク」の通勤列車が、線路上に放置されていたSUV車に衝突、脱線した。列車は待機線にいた貨物列車にもぶつかり、さらに折から対向車線を走ってきた別の通勤列車も巻き込んだ。 
 
 地元テレビ局は、同日早朝から「ブレーキング・ニュース(速報)」として、現場から生中継。上空のヘリは、小雨に煙る中、45度に傾いた車両や、現場付近に散乱する書類やガラス片を映し出した。一部の車両は、照明用の橋げたをなぎ倒し、その鉄骨の橋げたの下敷きになっていた。 
 
 現場には、応援も含め消防、警察など約300人の救助隊が出動、負傷者の搬出に当たった。現場付近は直線のレール上。すぐそばが、卸売りセンター「コスコ」だったため、そこの駐車上に救助施設が仮設された。 
 
 テレビの画面には、顔から血を流した人や、担架の上で、頭に包帯を待ち、救急車の到着を待つ女性の憔悴しきった表情が流された。 
 
 メトロリンクは、総延長800キロで、カリフォルニア州南部の6郡にまたがって運行されている公共通勤機関。12年に及ぶ営業の中で、最悪の事故だ。運行は全面ストップし、代替バスで乗客を運ぶ予定だ。 
 
 事故直後、車中では、コンピューターや、ブリースケースに入った書類などが宙に舞った。「車中には煙も立ち込めた」とある乗客。米紙ロサンゼルス・タイムズによると、乗客のゴッダード・パイリさん(53)は、列車の二階席で音楽を聴きながら、仮眠を取ろうとしていた。突然激しい振動。「なんとか自分を持ちこたえた」。その後、脱出が始まった。「乗客は、他の人を車中から救出しようとした。ある女性は、背中と首が痛くて動けないと言っていた」 
 
 キャシー・フランセンさん(57)は、友人とともに連結車両の真ん中に乗っていた。「列車が脱輪した後、列車が滑り続けた。ただ息を詰めていた。恐ろしかった」 
 
 警察当局は、現場付近にいたフアン・アルバレス容疑者(25)を拘束した。同容疑者は、衝突の直前にSUV車から脱出、事故を目撃していた。自殺をしようとしたが、果たせなかったとみられる。腕に傷があったが、警察では、これは事故とは関係なく、何らかのためらい傷とみている。過去にも自殺歴があった。同容疑者は殺人など10の罪状に問われる可能性がある。 
 
 死者の中には、テロ警戒のため、車中にパトロール要員として乗り込んでいた警察官も含まれている。現場に出動した警察幹部は、容疑者が線路上に車を放置して逃げたことに対し、「これは信じられない惨事だ。輸送機関の安全性を考えれば、まったく言語道断だ」と怒りをあらわにしていた。 
 
   


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