2005年03月29日21時56分掲載
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戦死恐れて軍入隊を躊躇 米軍の新兵採用が減少
イラク戦争による米軍兵士の犠牲が増える中で、米国内での新兵への応募が減少している。短期間で終了するとみられたイラク戦争は、武装勢力の抵抗で、予想外に長期化したことも、若者の軍隊への応募を躊躇させているようだ。また未成年の若者の両親が、危険な地域に派遣される子どもの行く末を案じて、軍への入隊を許可しないケースも目立っている。軍の新兵募集活動は今、厳しい状況を迎えている。(ベリタ通信=有馬洋行)
米紙プレス・エンタープライズによると、2003年3月の対イラク戦争開始以来、米軍兵士の死亡は1500人、負傷者は1万1000人に達している。イラク現地の厳しい戦況は、刻一刻と報道されており、軍隊に応募しようとする若者に心理的なブレーキをかけているのは否定できない。
2月中に陸軍の応募したのは、5114人だったが、目標の7050人を1900人以上下回った。海兵隊でも応募は2772人で、目標の2964人に届かなかった。海兵隊は1月も目標の数字より84人下回っている。伝統的に人気のある海兵隊が1、2月と募集枠を満たせなかったのは、ここ10年では初めてという。
米海兵隊募集担当スポークスマン(バージニア州)は、「極めて(採用が)困難になっている」と認める。特に募集の対象となる17歳の若者は、未成年のため、親の承諾を必要するが、イラク戦争が続いている状況下で、親が承諾を渋り、募集を難しくしている。
米カリフォルニア州南部のモレノ・バレー高校のニディア・アギレさん(16)は、卒業後、空軍に入隊すべきか悩んでいる。軍から入隊勧誘の電話が、定期的にかかってくるが、イラクでの米軍兵士の死亡の報道が伝わるたびに、心が揺れている。大学進学も考えている。
「入隊すべきか心の中に葛藤がある。生命が危険に晒されることはわかっているので、(決断が)難しい」
これに対し、国を守るため海兵隊に入隊しようと、その決意を熱く語る若者もいる。6月に高校を卒業するネート・ムレー君(18)は、「国のために戦いたい。死ぬとしても、国のために尽くして死ぬことを望む」
米軍は現在、徴兵制は敷いておらず、兵士は応募制になっているが、各種の調査によると、若者の間で軍への魅力が、近年薄らいでいるという。多くの高校卒業者の間で、大学進学を選択する割合が急増している。
一方、昨年は州兵募集でも採用枠を満たせなかった。陸軍予備役でもことしに入り、応募者が採用枠を下回る事態が起きている。イラク駐留米軍15万人中、約4割が州兵と予備役からの配属だ。イラクで死亡した兵士の10人に1人は、州兵か予備役の出身という。こうした状況もあって、家庭を持った20、30代の青年が、軍勤務を逡巡する傾向も出ている。
このように、イラク戦争の影響で、米軍は、かつてないほど、新兵の採用に苦しんでいる。しかし、米海兵隊募集担当スポークスマンは、最近新兵応募が減っているものの、最終的には、年間の3万8000人枠は達成できると、強気の姿勢を崩していない。
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