2005年04月02日00時50分掲載
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世銀、ラオスの巨大ダム計画支援を決定 NGOは非難
世界銀行は3月31日、国際的な環境保護団体などが反対運動を展開しているラオスのナムトゥン2ダム計画にについて、建設を支援することを決めた。理事会で決めたもので、ラオス政府と10年近い話し合いの後に決まった。ラオス政府は「貧困削減のためのダム」としているが、環境団体は豊かな自然を破壊し、そこに住む人々の生活を破壊すると主張している。(ベリタ通信=鳥居英晴)
「多くの議論の末に出した決定は、リスクは管理できるということだ。実際、われわれが関与している大きな理由は、こうしたリスクを管理するのを助けることだ」と世銀のウォルフェンソン総裁は述べた。
ナムトゥン2ダムは、ラオスの中部・ナカイ高原に計画されている水力発電ダムで、ラオス政府、フランスとタイの企業などが出資する合弁会社が事業者になっている。総事業費はラオスの国民総生産の70%に相当する約12億ドル。うち70%以上を海外からの融資でまかなう。
世界銀行はナムトゥン2ダム支援として、5000万ドルの部分リスク保証、2000万ドルの助成金、最高2億ドルの政治的リスク保証を与える。アジア開発銀行も融資を検討している。
メコン川の支流ナムトゥン川に高さ48メートルのダムを建設し、発電能力は107万キロワット。そのうち95%をタイに輸出し、25年間にわたって毎年2億ドルの収入を目指す。2009年に発電を開始する見込み。
ダムの建設で、高原の湿地帯450平方キロメートル(琵琶湖の約3分の2)が水没する。ナカイ高原に住む6200人がダムと貯水池の建設のために移転させられる。さらに、発電後の水はメコン川の別に支流セバンファイ川に流され、その流域に住む12万人から15万人の人々の漁業や農業に影響を与えるといわれる。
人口560万人の内陸国家ラオスは東アジアで最も貧しい国。一人当たりの年間国民所得は320ドル。木材と水力発電が主な産業。
「改善された政府の方針のもとで、水力発電の販売への適切な取り組みが、貧しい人々のための保健、教育それに基礎的インフラに投資する資金を増やす最良の方法であると信ずる」とウォルフェンソン総裁は述べた。
42カ国の153のNGOはウォルフェンソン総裁に請願書を送り、世界銀行がこのダムを支援しないように要請していた。
「ラオスでの他のダム・プロジェクトの否定的な実績、政府が収入を管理するにあったて透明性が確保されていないこと、国民の権利を尊重していないことから、ナムトゥン2のコストは潜在的利益より劇的に大きくなるという強い可能性がある」と嘆願書は述べている。
日本のNGO、メコン・ウォッチもこのダム計画に反対するキャンペーンを展開している。
ナムトゥン2ダムは、この10年間で世界銀行が最初に承認した大規模な水力発電計画で、2000年に世界ダム委員会がエネルギー、水資源開発についてのガイドラインを設定した報告書を提出して以来、最初のプロジェクト。
環境団体など各国のNGOは、この世界銀行の決定に対し、このダムはラオスに経済面や環境に深刻な影響を与えると、一斉に非難した。
スイスに本部がある世界野生動物基金(WWF)は、ダム計画は環境と地域に住む人々の生活を脅かすと指摘した。
WWFは、タイでの電力供給は現在、需要を上回っていると指摘、「このダムが貧困を減らすのではなく、むしろ人的な苦難と環境悪化を増大させることを恐れる」。
1300種の魚が生息し、5000万人の人々の食料源になっているメコン流域での水力発電プロジェクトについて完全なアセスメントを行うように求めた。
また、米国のNGO,国際河川ネットワークは、ダム計画による利益はラオスの貧しい人々ではなく、ラオス政府のエリートと外国のコンサルタントにもたらされる、という声明を出した。
世界銀行東京事務所
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