2005年04月02日23時24分掲載  無料記事
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米国の圧力で変貌するサウジのイスラム

 現在のサウジアラビアはサウド家とワッハーブ家が同盟を結んで建国された。ワッハーブはイスラムの聖典であるクルアーン(コーラン)を字句通り忠実に従うように説いたため、同国では最も厳格な教えが守られてきた。そのイスラムの盟主を自認するサウジアラビアのイスラムが揺れている様子がさまざまな報道から浮かび上がっている。(東京=齊藤力二朗) 
 
 最近の例としては、UPI通信が1日に伝えた次の短報がある。「勧善懲悪機構」のリヤド(首都)事務所は、集合住宅をキリスト教の教会にしていた10人のフィリピン住民を逮捕したとある。  
 
 これだけなら「何でもない事件」でもあるが、注目されるのは、UPIに情報を提供した情報源を勧善懲悪機構のメンバーが、匿名にすることを求めたという点だ。  
 
 勧善懲悪機構とは、UPIが「宗教警察」とカッコつきで言い換えているサウジアラビア独特の機構である。町を歩くと、細い杖を手にした痩せた老人が薄手の黒色のマントを羽織り、人々の宗教行動に目を光らせている。一日5回の礼拝時間になると「サラー、サラー!(礼拝だぞ)」と甲高い声で叫びながら、店を閉めるように命令し、通行人をモスクに駆り立てる。断食月のラマダーンになると、日中、飲食していないかも監視する。  
 
 サウジアラビアではキリスト教会建設がご法度であるから、マンションを教会として使っていた「不届きな者」を逮捕することは単純に職務を遂行しただけで、何も匿名で明かすような事件ではないはずだ。この匿名での情報提供という点こそサウジアラビアの現況を象徴している。  
 
 願わくばサウジアラビアを手中にすることを考えていると言われた勧善懲悪機構の幹部も、イスラム敵視化政策を採る米国の猛烈な圧力を受け、かつては宗教心に燃えて堂々と行っていた職務にしても、今や「遠慮がち」にならざるを得なくなっていることをこの短信は示しているともいえる。 
 
 ほかにも、最近、サウジアラビアの宗教学者などが不倶戴天の敵であるはずのユダヤ人聖職者らと米国で会談したとすっぱ抜かれた事件など注目される報道が相次いでいる。 
 
 米国がテロ撲滅を叫びながら、一方でそれを煽っているかのような報道もあった。ラーヤトルアラブ(イラクのアラブ民族潮流の機関紙)によると、反占領を唱える著名シーア派指導者のジャワード・ハーリシー師がCIA(米中央情報局)はマグレブ地方(北アフリカ)の国で過激なイスラム伝道師を育成する学校を建設していると言明したという。 
 
 原文 


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