2005年04月22日14時32分掲載
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不法移民の子に「米市民権与えるな」 出生地主義に批判の声
中南米系(ヒスパニック)の不法移民を多数抱えている米国だが、不法移民の親から生まれた子どもでも、出生地主義で自動的に米国市民になる。米国の修正憲法第14条(1868年確定)が根拠になっているが、米国の保守化のうねりの中で、共和党議員らから、ビザを持たずに違法に入国した移民の子どもに、こうした恩恵を付与するのは問題だとの声が上がっている。下院議会には、既に不法移民の子どもへの自動的な市民権付与を阻止するための法案が提出されるなど、今後に尾を引きそうな雲行きだ。(ベリタ通信=エレナ吉村)
米国は長年アフリカから黒人を奴隷として運び、南部の農園などで働かせた歴史がある。南北戦争(1861−65年)前の1857年、最高裁は、黒人のドレッド・スコットの要求に対し、奴隷やその子孫は米市民になれないとしていた。その後これが判例となっていたが、南北戦争や黒人解放令などで政治状況が変化。議会は、1868年憲法を修正した。
同年確定した修正14条は「米国内で出生し、または帰化した者で、米国の管轄権に服する者は、すべて米市民である」と規定している。つまり米国で出生すれば、外国人の子どもでも自動的に米市民となる。これが出生地主義だ。
米国には、メキシコなどから多数の不法移民が流入しているが、14条の規定に従い、不法移民から生まれた子どもには、市民権が付与されてきた。子どもが一定の成人年齢に達した後、子どもがスポンサーとなり、不法移民の親に合法的な市民権を与えることが可能になっている。このため、不法移民に反対する人たちが、14条の規定は、米国への不法入国を奨励する結果になっていると、長年批判してきた。
米紙プレス・エンタープライズによると、不法移民への自動的な市民権付与を禁ずる法案を提出したのは、ゲイリー・ミラー米下院議員(共和党、カリフォルニア州選出)ら。連邦法を無視して不法入国した移民の子どもに対し、憲法上の権利を与えるのは、理屈に合わないとしている。
これに対し、移民法弁護士のマーガレット・マコーミック氏は、1898年の最高裁判例を引用。14条は、親の移民上の法的立場がどうであれ、子どもに自動的に市民権を付与するものと解釈されていると主張している。このため、議会に提出された法案は、憲法に反するものであり、議会には採択する権限がないと指摘している。
さらに「出生地主義の終焉は、法律的な権利のない非搾取階級を作り出し、地域社会にに参加する道をふさぐものだ。法案は、米国を能力主義から、カースト制度に移行させる」と批判している。
米国には800万から1200万人の不法移民がいるとされる。多くがメキシコ人だが、ブッシュ大統領は、隣国のメキシコとの関係を配慮、移民問題の解決策を模索している。しかし、共和党など保守派の間では、メキシコのフォックス大統領が、メキシコからの不法移民の流入阻止に、なんら有効な手段を講じていないことへの不満も強く、移民問題に関しては、冷え切った関係が当分続きそうだ。
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