2005年04月26日20時35分掲載
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米国との近未来戦争小説、トルコで大受け 背景にイラク戦争めぐる関係冷却化
トルコと米国の関係が、ぎくしゃくしている。イラク戦争の開戦前にトルコが、南東部にあるインジルリク空軍基地などの米軍の使用を拒否したことを米政府首脳が蒸し返し、最近再びトルコを非難したのがきっかけだ。トルコ国内ではメディアを中心に反米感情が高揚、米国がトルコを攻撃する軍事スリラー・フィクション「メタルストーム」がベストセラーになるなど関係冷却化を象徴する現象が起きている。(ベリタ通信=有馬洋行)
トルコは、イスラム教徒が多数を占めるが、政教分離の共和制国家で、イスラム教国として欧州連合(EU)入りを目指している唯一の国家だ。西側軍事同盟として出発した北大西洋条約機構(NATO)の一員でもあり、またイスラエルとも良好な関係を維持していた。しかし、2002年11月の総選挙で、イスラム教単独政権が誕生し、この結果、03年の対イラク開戦前後から、米国への姿勢が微妙に変化している。
イラク開戦前、トルコは、米軍によるトルコ南東部の基地使用を拒否。米国内での反トルコ感情を生んだ。最近、チェイニー副大統領は、イラク国内での反武装勢力に米軍が今でもてこずっているのは、開戦当初、トルコが協力しなかったためだと批判、トルコ国内のメディアの反発を買った。
米紙ロサンゼルス・タイムズによると、トルコ国内の反米感情は、ここ2年間で一段と悪化している。数多くの世論調査が発表されているが、マーシャル財団の調査では、反米感情を示した人の割合は、82%にも達している。イスラエルのパレスチナ西岸地区への対応にも批判が集まっている。シリア、イランに対する米国の強圧的な態度に反発する声も高まっている。
ベストセラーの「メタルストーム」は、トルコの若手作家2人の共著。「日米開戦」などで知られる米作家トム・クランシーの作品などと同様の近未来の軍事スリラー作品だ。
イラク北部の米軍とトルコ軍が衝突し、これが全面戦争に発展、米軍がトルコのイスタンブールやアンカラを攻撃する。その仕返しにトルコは、米国で核爆弾を爆発させるという過激な内容だ。
作品がベストセラーになった背景には、根強い対米不信感があり、イラクの次は、シリア、イラン、そしてトルコが攻撃されるのでは、と感じている人が多いことを物語っている。一部の米メディアは「メタルストーム」を反米感情を煽る作品として問題視しているが、これがまたトルコ国内の反米感情に火を注いでいる。
3月にライス国務長官がトルコ入りした際も、両国メディアの相互批判問題が取り上げられたという。
米国内の反トルコ感情をめぐっては、2月の世論調査機関メトロポールの発表では、トルコ人の約4割が、米国が「最大の敵」とみている。これは、これまで トルコの伝統的な敵とされたギリシャの数字の2倍以上という。
イラク開戦当時、イラク北部にいたトルコ人部隊を米軍が、誤って拘束した事件があったが、これもトルコが、軍事基地使用を認めなかったため、米軍が報復をしたためだの論調も依然残っているほどだ。
またトルコは、米国が支援した新生イラクの大統領にクルド人出身者が就任したことにも不安を感じている。クルド人は、シリア、イラン、トルコなどでも分離独立を訴えており、各国の不安定要因の一つとされる。
一方、こうした冷却した両国関係を修復しようとの動きも起きている。米ワシントン・タイムズ(電子版)は、トルコが、米軍に対し、トルコ国内の基地使用を認める考えだと報じている。またライス国務長官のトルコ訪問後、米保守系メディアのトルコ批判が沈静化してきたとの指摘もある。
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