2005年04月28日16時00分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200504281600314
「反遺伝子組み換え綿製品」運動開始へ インドの環境活動家
遺伝子組み換え作物(GMO)に反対しているインドの環境活動グループは近く、国内外の衣料品メーカーを巻き込んだ「遺伝子組み換え綿を使わない衣料品」運動を始める。インドが遺伝子組み換え綿花の商業栽培を許可して3年。遺伝子組み換え綿花の実績をめぐって、バイオテクノロジー企業と反対派が真っ向から対立する中、インド政府は遺伝子組み換え綿花の種類と栽培地域の認可を拡大している。(ベリタ通信=鳥居英晴)
インドの各紙の報道によると、インドの環境活動家ヴァンダナ・シヴァさんが中心となったこの運動には、国際環境保護団体のグリンピースや「地球の友」からの支持も得ている。インド国内のファッション・デザイナーやナイキ、エスプリも製品に遺伝子組み替え綿を使わないと約束しているという。
インドは2002年、激しい議論の末、害虫への耐性を強化した遺伝子組み替え綿花「Bt綿花」3種類について、中部と南部での商業栽培を3年間の期限付きで認可した。
Bt綿花は、モンサント(本社・米セントルイス)が26%出資するインド企業のマヒコが1997年から種子の試験をしていた。Bt綿花の種子には、パチルス・チューリンゲンシスという殺虫性の毒素を出す細菌から取り出した遺伝物質が組み込まれている。
モンサントは、Bt綿花は人や魚、野生動物、益虫には害を与えることなく、標的とする害虫にのみに効果を発揮すると主張。また殺虫剤の使用を減らし、生産コストを削減し、収量を高めると宣伝している。
政府は昨年4月には、中南部での商業栽培用に、インドの会社ラシ・シーズのBt綿花も承認した。
インドの綿生産は、効率の悪いことで知られる。綿花の作付面積は世界最大だが、収穫量は中国、米国に次いで世界3位に甘んじている。単位面積収穫量は世界平均の半分以下。
モンサントは、収穫量を60%も増やせるとして遺伝子組み換え綿を売り込んだ。2002年のBt綿花の作付け面積は4万ヘクタールであったが、2004年には55万ヘクタールに拡大した。
政府は3月、新たに6種類のBt綿花の北部州なのでの商業栽培を許可した。遺伝子組み換え作物に対する懸念に十分応えるようなシステムが確立されない限り、認可されるべきでないと主張しているインドのNGO、Gene Campaignは、決定する前にNGOの意見を聞くべきだとしてこの決定に反発している。
一方で3年前に認可した3種類のBt綿花は今年3月、認可の期限が切れたが、環境省は認可の延長ができないでいる。これはアンドラプラデシュ州政府などから収穫量が減ったという好ましくない報告が出ているためだ。
アンドラプラデシュでのBt綿花栽培について、3年間調査したNGOの報告によると、従来種の綿花が1エーカー当り650キログラムの収量があったのに、Bt綿花は535キログラムしかなかった。225の農家対象にした調査では、従来種に比べ、収入は60%減った。報告は、この問題について議論が決着するまで5年間、遺伝子組み換え綿の栽培を一時停止するよう求めている。
収穫減で自殺をする農民が相次ぎ、アンドラプラデシュの中には、マヒコに補償を求めている自治体もある。
Bt綿花を認可した理由には、農薬の支出を減らすことで、農家の収入を増やすという目論見があった。しかし、農薬の使用は2倍から3倍に増えたという報告もある。これは害虫オオタバコガの農薬に対する耐性が強まったためだ。
一方、マヒコとモンサントの合弁企業マヒコ・モンサント・バイオテクは今月、これとは相反する調査結果を発表した。遺伝子組み替え綿花は昨年、従来綿花と比べ58%も収穫が多かったという。収入は163%増えたとしている。
マヒコ・モンサント・バイオテクの幹部は「農家からの反応はいい。今度の作付けは3倍に増えると予想している」と強気の見通しをしている。
GMOの健康面への影響として懸念されているのはアレルギー性。また管理が不可能というのが最大の問題点とされている。殺虫毒素を出す作物も、いずれ耐性を持つスーパー害虫を生み出すことになると指摘されている。
さらに多国籍農薬会社が、種子事業に乗り出して、種苗会社を次々と買収し、種子が一握りの巨大企業に独占されつつあることも問題視されている。
シヴァさんはNGOのナブダニャ(9つの種)で、在来種の作物の種を特許から守る活動をしている。
科学、技術、自然政策研究所財団の代表も務めるシヴァさんは、「遺伝子組み換え綿を使わない衣料品」運動を8月9日に開始する予定でいる。この日は、インドの環境保護グループがモンサントに対し、インドから出て行くよう1998年に運動を開始した日である。8月9日は、ガンジーが英国に対し、インドから出て行くように要求した日でもある。
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。