2005年04月29日00時08分掲載
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あわやタイタニック号の二の舞い 巨大波に襲われた客船、ピアノで客静める
「船室の荷物は宙を舞った。ガラスが壊れ、まるで盗みに遭ったような状況だった。海は大シケで、まるで洗濯機の中にいるようだった」―。米フロリダ州マイアミからニューヨークに向かう途中のノルウェーの大型客船「ノルウェー・ドーン」(全長290メートル、乗客2300人)が航海中の大西洋で、ビルの7階の高さに及ぶ巨大な波に襲われた。低気圧の真っ只中で強風が吹き、大波が発生したといわれるが、乗客たちは、タイタニック号の悲劇を思い出しながら、長時間に及ぶ恐怖の体験をした。(ベリタ通信=有馬洋行)
ノルウェー・ドーン号は4月8日夜にマイアミを出航したが、乗客には、悪天候が予想されるとの通告があった。船酔いの薬も用意された。朝にかけて海は大シケ。米東海岸沿いの高気圧とバミューダ海域に伸びた低気圧の間を客船は航行する形になった。9日午前6時過ぎ、高さ21メートルに達する巨大波が、客船の船首部分を襲った。
海水が客室まで流れ込み、約1100ある船室のうち、62室に水が入り込んだ。窓ガラスも割れ、4人の乗客が負傷した。テレビニュースでは、乗客が撮影したとみられるビデオが公開され、頭を抱えて階段を降りる乗客の姿や、床の血痕などを映し出した。
客船は、その前からかなり揺れていたようだ。海も空も灰色で、大きな波しぶきが何度も甲板を洗った。客室のベッドは激しい揺れのため、右左に動いた。米ノースジャージー(電子版)によると、3人の子どもと一緒にいた39歳の母親は、恐怖で泣き叫ぶ子や、吐き気を催した子の世話で大変だった。
そのとき「ドーン」と激しい衝撃を感じた。高さ21メートルの大波が襲ったのだ。波に乗った感じで、客船も大きく傾いた。彼女は子ども3人を連れて通路に飛び出したという。救命胴衣を着けて右往左往する人。どこからか悲鳴の声も上がり、船内は一時パニックに。その後も船は揺れ続け、「沈没するのでは」との不安に襲われた人もいた。
乗客の気持ちを和らげるため、楽団のピアニストが、ピアノを弾き始めたが、曲が、映画「タイタニック」で使われたものだった。
タイタニック号は処女航海の1912年、北大西洋で氷山に衝突、沈没した。このため乗客が騒ぎ出し、ピアニストがあわててやめる一幕もあった。
全米気象局のエリック・クリステンセン氏は、米紙ニューヨーク・タイムズに対し「波の大きさは、めったにお目にかかれないものといえる。普通は大きくても6〜8メートル程度だ」と、予想外の巨大な波の出現に驚いている。
客船は急遽、バージニア州のチャールストンに修理のため入港。同時にここで約300人の乗客が下船し、飛行機や車で帰宅した。「もうクルーズ旅行はしない」と話す老夫婦や「せっかくのハネムーンが台無しになった」と嘆く新婚カップルも。船会社は、乗客に対し、旅費の半分の返還を申し出たという。
大型客船が大波に襲われた事故は、最近では2件起きている。昨秋、別のノルウェーの客船が、ボストンに向かっている途中、波で窓ガラスが割れる事故が起きている。またことし2月に、アラスカで客船が高さ17メートルの波に襲われ、乗員2人が負傷している。
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