2005年05月05日11時21分掲載
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皮膚がん予防に「日よけ教育」の導入を 紫外線から子どもを守る
欧米人に多いといわれる皮膚がん。強い紫外線が影響するといわれているが、米国では、太陽に浴びる機会の多い子どもたちに、学校現場で日差しを避ける教育を行なうべきだ、との意見がある。米カリフォルニア州議会でも「日よけ教育」を授業の一環として取り組むべきだとの法案も提案されている。しかし、強烈な日差しをブロックするために学校校舎の改修などの予算も必要になるため、「日よけ教育」が、授業のカリキュラムの中に簡単に取り込まれるかどうかは不明だ。(ベリタ通信=江口惇)
紫外線の怖さを学校教育の中で子どもに知らせようという動きは、自分の娘を皮膚がんで失った米カリフォルニア州に住む母親バレリー・ギルドさんが呼び掛けた。米紙プレス・エンタープライズによると、娘のチャーリーさんは、ウオール街で働くかたわら、将来、医学校で勉強することを夢見ていた。しかし、皮膚がんの黒色腫(メラノーマ)が発見され、その1年後に死亡した。26歳だった。
「娘は友人たちには、皮膚がんで死ぬことはない、と話していた」とバレリーさん。確かに黒色腫でも早期発見なら、100パーセント完治するといわれる。しかし、発見が遅れると生存率は激減する。娘のチャーリーさんも、治癒できると考えていたのかもしれない。
皮膚がんを甘くみてはいけない──と、バレリーさんは、娘の死後、人々に皮膚がんの怖さを喚起するために行動を起こした。皮膚がんが発生する主要な要因の一つは、紫外線といわれる。小中学校の生徒たちは、教室を離れて屋外の休憩施設で昼食をとることが多い。夏にかけて生徒たちは、校庭でも強い日差しを浴びる機会が多い。
このため、バレリーさんは、「日よけ教育」を学校の授業の一部に組み込むよう法律の制定を訴えた。強い日差しを避けるために、新設校には直接日差しが指さないようなデザインを要求するものだ。この願いが実り、法案はジャッキー・スピヤー上院議員の手で議会に提案されている。紫外線の子どもへの影響について啓発キャンペーンを行なっている米環境保護局(EPA)でも、紫外線の怖さを子どもたちに周知徹底させる動きを歓迎している。
「皮膚がんは特に若い女性にも多い。皮膚がんを予防するすべての方策を取る必要がある。まだ先は長いかもしれないが」とバレリーさん。
皮膚がんにもいろいろ種類があるが、その中でも黒色腫は悪性とされる。米国では黒色腫の患者が、増えている。05年の発症者数は10万人を超えている。
1986年以来黒色腫の治療を受けているという土産店経営のジョン・グスタフソンさんは「人々にこの病気のことを教育することには賛成だ。しかし、太陽や、屋外でのスポーツをすることを恐れないでほしい。(皮膚の)保護とクオリティーの高い生活のバランスを取ることが必要だ」と話す。
一方、自治体側では、日差しを避ける学校作りには、予算上の問題から難色を示す声もある。また「日よけ教育」を実施するにしても、従来の保健教育と重なる部分もあり、経費の点からも疑問視している。
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