2005年05月06日08時08分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200505060808315
中南米にもマーシャルプランを 不法移民めぐり議論百出
メキシコ国境からの不法移民が絶えない米国社会で、移民排斥の動きが勢いを増している。不法移民の数は、800万人とも1000万人ともいわれているが、実数は不明だ。米国の不法移民対策でもっとも難しいのは、これだけ多くなった不法移民を即座になくする方策が見当たらないことだ。しかし、こうした政府の緩慢な姿勢に、国民の間から、怒りや不満も高まっている。これに対し、移民擁護派は、移民は米国人のやりたがらない職業に安い賃金で働き、米国経済に恩恵を与えていると反論している。(ベリタ通信=エレナ吉村)
南米からの移民労働者の多い米カリフォルニア州。シュワルツネッガー知事は最近、新聞発行人の会合で、移民対策を問われ、「国境を閉鎖せよ」と発言した。移民を排除せよとの差別的な意見とも言え、反響を呼んだ。しかも、移民問題は、連邦政府の管轄事項で、州知事に国境を閉鎖する権限はない。知事は、すぐに「英語が不得手で言い間違いをした。国境を守ると言うつもりだった」と苦しい弁明をした。
歴代の米政権は、事実上メキシコなどからの不法移民を放置してきた。しばしば、不法移民に対し恩赦も行なわれ、長年不法に滞在していれば、恩赦などの救済措置が受けられるとの印象を与えた。この結果、多くの不法移民者が米国を離れずに潜行、移民数が増大し、今や手のつけられない状態になっている。
メキシコなどからの不法移民は、事実上の経済移民で、出稼ぎ労働に従事している。米国人のやりたがらない職業に就き、しかも賃金は安い。それでも故国と米国との経済格差を考えれば、米国で働くメリットは計り知れない。
ブッシュ大統領は過去に、雇用者から保証を受けた不法移民に対しては労働許可証を与えるとの新移民対策を公表しているが、米議会から反発を食らっている。大統領は、移民問題への怒りが、移民排斥につながってはいけないと指摘しているが、本気で解決に動くつもりがあるのか、はっきりしない。
4月から市民ボランティアがアリゾナ国境でメキシコからの移民監視を実施した。「ミニットマン・プロジェクト」と呼ばれるこの計画に参加したのは、延べ780人。アリゾナ国境は、メキシコからの主要流入ルートだが、例年に比べ、不法入国者が半分に激減した。
この計画は、政府の移民対策への不満が原因だ。政府が真剣にやらないので、自分たちでやるとの発想だ。「ミニットマン・プロジェクト」の成功で、ジョージア、アラバマ、コロラドなどの他州でも、市民ボランティアによる移民監視の動きが広がりつつある。
これに対し、移民擁護派は、ホテル、レストラン、建設現場、農場などで低賃金で働く不法移民のお蔭で、米国市民は結果的に恩恵を受けていると反論。悪いのは、不法移民でなく、彼らを雇用して利潤を上げている経営者たちだと述べている。
米国のスペイン語放送局「ウニビシオン」のキャスター、ホルヘ・ラモス氏は、不法移民に恩赦を与えるべきだと主張。また長大な米国とメキシコ国境を監視することより、米国が中南米への経済支援を強化すべきだと語っている。
メキシコなどからの不法移民は、経済的な理由が大半なので、中南米諸国が経済力を増せば、移民も減るとの考えだ。第二次大戦後に、経済的に疲弊した欧州を支援するため米国が行なった「マーシャルプラン」を中南米でも行なうべきだと提言している。
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。