2005年05月10日02時05分掲載
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息子に不利な判定とインドネシア高官が試合で暴れる
インドネシアの政府高官が、自分の息子が参加する学校のバスケットボールの試合で、米国人らに暴行を加え、波紋を広げている。インドネシアは外国からの投資誘致を呼び掛けているだけに、こうした動きに冷水を浴びせかねない暴力事件に政府関係者は困惑している。地元紙「コラン・テンポ」(4月28日付)が伝えた。(クアラルンプール・ベリタ通信=和田等)
事件が起きたのは、4月17日にジャカルタのインターナショナル・スクールでバスケットボールの試合の際。米国人らに暴行を加えたのはテオ・トゥミオン投資調整庁長官。インターナショナル・スクールには、ジャカルタに滞在する外国人駐在員や、ナイキやエクソン・モービルといった米国大企業で働く米国人駐在員の子弟が通っている。
自分の7歳の息子が出場するバスケットボールの試合観戦に来ていたトゥミオン長官は、息子が、審判から不公平は判定を受けていると思い込んだ。審判といっても14歳の少年だが。怒りを爆発させた同庁官は、観戦者用のイスを投げ出し、審判のオーストラリア人少年に襲いかかった。
目撃者の話によると、同長官はさらに、これを止めに入ろうとした4人の米国人とオーストラリア人にも暴行を加えた。オーストラリア人は駐在員だったが、その際、同長官は「国外退去にするぞ」と脅迫したという。
同インターナショナル・スクールのニアル・ネルソン校長は、バスケットボールの試合中に暴力行為や恫喝、脅迫が行なわれたことを認め、暴行を受けた被害者のうち米国人1人が鼻の骨を折り、もう一人が頭に数針縫うケガを負ったことを明らかにした。
在インドネシア米国大使館は、こうした暴行事件が起こったことに対する懸念を表明。インドネシア政府の対応を見守る姿勢を示している。
一方、トゥミオン長官はテンポ紙に発表した手紙で、なぜ息子が不当な扱いを受けるのか問いただしてもバスケットボールの試合の主催者が説明しなかったため、かっとしたと話している。
この騒ぎはインドネシアの地元紙のトップ記事として報じられた。外国からの投資を望んでるユドヨノ政権は、投資事業ライセンスの認可を行なう投資調整庁の長官自身が外国人駐在員に対する暴行を働いただけに、困惑の色を隠せない。
ディノ・ジャリル大統領報道官は「こうした行為はインドネシア政府職員の意思や行動を代表したものではない。インドネシア政府は外国からの投資を支持し、外国人を歓迎する姿勢をとっている」と述べ、イメージ改善に躍起になっている。
一方、ユソフ・カラ副大統領は、トゥミオン長官が近く解任されることを明らかにした。しかし、副大統領は同庁官の解任は暴行事件とは関係なく実施される人事異動措置だとしている。
ユドヨノ大統領は、汚職の摘発と外国投資の誘致に力を入れることを公約のひとつに掲げ、昨年10月に大統領に就任した。しかし、これまでのところ、汚職撲滅キャンペーンでは大物容疑者の摘発は行なわれていない。投資面でも投資環境の改善を目的とする法案はまだ議会で審議もされていない。今回の暴行事件は、ユドヨノ政権にとって「泣きっ面に蜂」といえそうだ。
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