2005年05月13日13時11分掲載
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米、ネット犯罪警戒でオンラインショッピング激減 個人情報データ提供を懸念
インターネットを使った商品の購入や、オンラインの金融取引などが日常化しているが、そのネットの世界に、組織犯罪グループが入り込み、暴利をむさぼろうとしている。その手口は、クレジット番号の不正入手や詐欺行為。米国では、3月に大手信用情報会社から10万人の個人情報が密かに盗まれていたのが発覚、消費者に不安を与えた。こうしたネット上の安全面の問題から、オンラインショップからの消費者離れの動きも起きている。(ベリタ通信=江口惇)
米COXニュースによると、少し前までは、コンピューター犯罪と言えば、「ハッカー行為」といわれていた。ハッカーとは、熱狂的なコンピューターの若者が、相手のコンピューターに侵入して、プログラムやソフトを破壊するもの。彼らは、金銭を奪うことより、自分のコンピューター知識を自慢するような感じで、相手のコンピューターを壊せば、満足していた。
しかし現在のコンピューター犯罪は、完全な資金獲得が目的で、それだけ悪質化している。中でも、新規参入してきた組織犯罪グループの暗躍が目立ち、ゆすり、個人情報の窃盗などに手を染め、荒稼ぎを狙っている。ネット犯罪は数十億ドルの利益をもたらすビジネスにもなっている。
時空を超えた情報時代だけに、組織犯罪グループもグローバル化している。ロシア、東欧、アフリカなどがグループの温床になっている。モスクワに本部のある国際的ソフトウェア会社「カスペルスキーラブ」の創設者ユージン・カスペルスキー氏も「インターネットに組織犯罪の時代が、やってきた」と警告している。
米サンフランシスコ・クロニクルによると、儲けの手口は、例えば不正に入手したクレジットカードの番号を使い、オンラインで商品をまず購入。それをどこかの国に発送し、そこで商品を売却した後、売上金を仲間で分配する仕組みだ。しかし、このネットワークに参加する者は、ネット上だけでつながっている場合も多く、仲間の顔さえ知らないこともある。かなり杜撰な運営と言えなくもない。
こうしたネット犯罪に、米財務省シークレット・サービスや司法省も監視の目を光らせている。昨年10月には、ネット上で200万人分のクレジット番号を売っていた国際犯罪グループが米国などで摘発され、30人が逮捕された。
またニューヨークのマフィア「ガンビーノ・ファミリー」のメンバーが、ネット上での詐欺行為で摘発され、ことし2月の裁判で、6人が有罪を認めた。マフィアまでが、ネット犯罪に進出してきたと話題になった。手口は、ポルノのサイトにアクセスした人に対し、クレジット番号を入力すれば、入場は無料と騙し、2億3000万ドルを稼いでいた。
一方、米国で、2003年に個人情報の窃盗の被害に遭ったと答えた人は、1000万人にも上り、またこれによる消費者や企業の損害は500億ドルにも達している。3月には、信用調査会社「ChoicePoint」で、クレジットカード番号や社会保障番号などの個人データ10万人分が漏洩していたのが分った。盗まれた個人データが、ネット上で密かに売買されているのは、今や常識になっている。
こうしたネット上の安全面への懸念から、04年にオンラインでショッピングをする人が25%減少したという。インターネット・ビジネスは米国経済に今や大きな影響を与えているだけに、業界団体もネット犯罪防止を政府に要請している。
大手ソフトウエアメーカーの団体「ビジネス・ソフトウェア・アライアンス」では、デルやマイクロソフト社の代表をワシントンに派遣、ブッシュ大統領に対し、ネット犯罪防止で委員会設置を求めた。
前述のカスペルスキー氏は、ネット犯罪は、情報の窃盗に遭っても、目に見えない形で行なわれるため、ある意味では、一般的な犯罪より、被害が大きいと指摘。しかも、犯罪者たちが、居場所や、名前などをいつでも自由に変えられるため、摘発は容易ではないと話している。
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