2005年05月14日03時05分掲載  無料記事
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中国が電子掲示板の書き込み規制へ 反日デモ「沈静化」の背後で

 インターネットのウェブサイトなどにあるビー・ビー・エス(BBS、電子掲示板)は、ユーザーが、いろいろな意見を書き込め、多くの人にとって情報を共有できる場として知られる。しかし、中国で吹き荒れた反日デモの際、BBSに扇動的な書き込みが行なわれ、波紋を呼んだ。この影響か、中国の広東省では最近、ネット上の有害情報に関しては、BBSの管理者が責任を負う必要があるとの通達を出し、規制に乗り出した。(深セン・ベリタ通信=竹田誠一) 
 
 広東省の日刊紙「南方都市報」によると、中国の広東省新聞管理局、広東省公安庁、広東省人民政府新聞弁公室は連名で「ネット上での有害情報の普及を一層強力に防止することに関する通知」を出した。この結果、BBS上に貼り付けられたもので、政府の規定する「有害情報」に触れる違法な内容については、BBSの管理者の責任が問われることになった。 
 
 「有害情報」とは、政府が規定する9種類の内容を指している。具体的には、デモの扇動、ポルノ、政権の転覆を意図する内容、法輪功などのいわゆる「邪教」と呼ばれる団体の宣伝などだ。 
 
 中国では、4月初旬から、日本の国連安保理常任理事国入りや、歴史教科書問題に反発して、各地で反日デモが勃発。その際にデモの呼び掛けの主要な媒体の一つになったのが、ネット上のBBSへの書き込みだった。 
 
 中国政府は、反日デモを押さえ込むため、こうしたネット上でのデモ参加の呼びかけを禁止した。ネット上で、「廃車を爆発させてデモを盛り上げよう」などと呼び掛けた男は拘束された。しかし、このような、ネット上の大量の書き込みを政府だけの力で抑え込むのには限界がある。そこでBBSの管理者に法的責任を負わせ、より効果的に言論を統制することを狙ったともいえそうだ。 
 
 広東省通信管理局の関係者によると、現在、多くのBBSで管理者は名ばかりになっており、その内容に関与していない。このためユーザーが勝手に「有害情報」を流布させようとする事態も起きている。またネット上にはポルノもあふれ、青少年に悪影響を与えると懸念されている。 
 
 通知は、BBSの管理者の責任を明確にし、各テーマごとに必ず一人の専属の管理者を置かなければならないとした。また管理者は、BBSに書き込まれた内容について監督し、ふるいにかける責任を負う。もし規定に反した内容が発見された場合は、政府の関連部門が管理者の責任を追及し、法に基づいて処分するとしている。 
 
 ふるいにかける方法としては、「有害情報」を「自動濾過」する機能を持つソフトを使用させ、「先審後発」(内容を先に審査し、審査を通った情報のみをBBS上に掲載する)を原則とするとしている。 
 
 また、管理者に対し、BBSに貼り付けられた内容と公表された時間、IPアドレスなどを記録・保存することも義務付けている。BBS上に成立した「グループ」については、新たな参加者は必ずグループの創設者の許可を得て加入すること、参加者の人数に上限を設けることも規定している。 
 
 中国のネット上には、無数のBBSが存在し、マスメディアでは決して見ることのできない情報が流れている。これらが今後、「先審後発」の原則に沿って運営されるかは疑問だ。言論を抑えようとする政府とそれを逃れようとする市民のいたちごっこは、これからも続きそうだ。 


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