2005年05月23日12時28分掲載  無料記事
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社内恋愛に気を遣う会社側 セクハラ訴訟の恐れから

 職場恋愛はどこの世界でもあるが、これが上司と部下との恋愛になると話は複雑にある。セクハラで部下が会社を訴える恐れがあるからで、米国では不適当として制約を課す動きもある。1991年にクラレンス・トーマス最高裁判事の就任をめぐり、セクハラ問題が浮上し、トーマス氏の元部下だったアニタ・ヒルさんが、米議会でトーマス氏から何度か猥褻な言葉を聞かされたと証言したことがあった。この問題は、米国のセクハラの深刻さを喧伝する結果となり、以後、会社側は、セクハラ訴訟に発展しかねない社内恋愛には気を遣っているという。(ベリタ通信=江口惇) 
 
 ミシガン州のある会計事務所は、社員同士の社内交際には異論はない。しかし、直接指導する立場にある上司と部下の女性の恋愛については厳しい制約を課している。人事担当のビル・ブフェさんは、こうした上司と部下との恋愛は「不適当」と考えていると話す。交際が発覚すれば、当然、上司は指導する立場を解かれるという。 
 
 米紙ナイト・リッダーによると、90年代以降、米国社会では、仕事場に絡んだセクハラ訴訟が多発、企業の中には、「職場でのデート禁止」を採用するところが目立った。莫大な損害賠償を請求される恐れのあるセクハラ訴訟だけに、企業も自己防衛のために「デート禁止」を打ち出したのだ。 
 
 ブフェさんは、デート自体には本来問題はないが、社内交際の場合、破局が生じたことも考える必要があると指摘する。破局が表面化した場合には、社内での昇進や評価にも影響を与える可能性がある。また破局で社員が会社を辞める事態も起きたり、会社がセクハラで訴えられる危険性も増大する。 
 
▽社内恋愛自体は盛んに 
 
 しかし、会社側のこうした思惑とは裏腹に、実際は、社内恋愛は盛んになっているという。米国の国勢調査によると、20から24歳までの未婚女性は、1970年に比べると、2003年は倍増した。30から34歳の未婚女性も3倍増えている。職場に未婚女性が多いということは、社内恋愛に発展する可能性が当然高くなる。 
 
 ブフェさんの会計事務所は、毎年新人社員、中途採用をそれぞれ100人採用してるが、新人の場合、社内教育や職場が一緒などを理由に約25%が社内恋愛に発展しているという。 
 
 ミュージック関係の会社勤めのクリスティーナ・コンテさんは、ニューヨークの職場からミシガン州の職場に変わった際、そこの職場にいた同世代のジェラルドさんと恋に落ちた。婚約するまで仕事場では、極力関係を知られないようにしたという。職場の同僚は30人だったが、交際を知っていたのは数人だけだった。 
 
 会社側では一般に、職場内での抱擁などは、行き過ぎた行為として慎むよう求めている。部屋の隅での親密な会話なども好まれない。肉体的な接触や、会話の内容は、将来セクハラ訴訟の材料になりかねないからだ。 
 
 また破局が生じても相手の悪口を言わないことも肝要だという。このほか社内恋愛には、同僚からの嫉妬などもあるといわれるだけに、社会人としての常識的な行動が望まれるようだ。 


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