2005年06月09日12時35分掲載
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フィジーで国民和解案めぐり情勢緊迫化 今も続く国会占拠事件の後遺症
【クアラルンプール9日=和田等】南太平洋に浮かぶ島国、フィジー共和国でライセニア・ガラセ首相率いる政府がこのほど、和解・寛容・団結法案を国会に提出したが、同法案の是非をめぐり各方面から反対の声が続出し、緊張が高まっている。
オーストラリアの公共放送ABCによると、この法案は、同国で2000年に起こった国会占拠事件に関与して起訴、有罪判決を受けた者に対する恩赦を与えることなどを通じて、国民和解と団結を図ることを目的にしたもので、恩赦の対象には事件の首謀者で、有罪判決を受けたジョージ・スペイト服役囚も含まれている。
これに対して、インド人系野党・労働党、フィジー労働組合会議、軍、農民をはじめ、多方面の国民の間から反対を表明する声が続出。「事件首謀者らへの恩赦を認めたこの法案が成立するようなら、法の統治や憲法、民主主義が損なわれることになる」(フィジー労働組合会議のアンソニー議長)として、この法案成立を阻止するため国際的な働きかけに乗り出している。
「事件首謀者の釈放は国の安全保障を脅かすことにつながる」として、特に強硬な反対姿勢をとっているのが軍で、フランク・バイニマラマ司令官は政府が法案の採択・施行を強行するなら、「しかるべき行動を起こさざるを得なくなる」と警告した。同司令官は「しかるべき行動を起こす」が何を意味するかを明らかにしなかったが、最悪の場合、軍の決起もありうることを示唆した発言とも受け取られている。
一方、フィジー警察のアンドリュー・ヒューゲス長官は、バイニマラマ司令官の発言は軍の総意を反映したものではないとしながらも、「軍人が占めている位置を考慮して、警察にはあらゆる注意を払う必要があるということは確かだ」と語り、軍の動きに警戒を怠らないようにする姿勢を示している。
またガラセ首相やチョセファ・ボサニンボラ内相をはじめ、複数の政府高官に脅迫電話がかかるなどの事態も起きているため、警察は首相や政府要人への警備態勢の強化を図っている。ゴロニアシ・バレ司法長官の自宅の外に6日夜、軍服を着た男4人が現れたとの報告もあったことから警察が捜査に乗り出した。
農民らも、政府がこの法案の成立を強行するようなら、同国最大の農産物であるサトウキビの収穫をボイコットするとの通告を突きつけている。これに対してガラセ首相は、「収穫ボイコットはすでに苦闘を余儀なくされているサトウキビ産業をさらに脅かすことになりかねない」として、農民に収穫を続けるよう呼び掛けている。
フィジー政府による法案提出に対してはニュージーランドが関心を示し、この件に関してフィジー国内でさらに議論を重ねる必要があるとの見解を表明。「それぞれの民族社会内および異なる民族社会間での真の和解に基づいてフィジーの安定と平和、民主主義、繁栄が確立されることを期待している」(マリアン・ホッブス外相代行)との立場を明らかにしている。
フィジーでは2000年5月、インド人系のマヘンドラ・チョードリー首相率いる政権に不満を持つフィジー人系武装集団が国会を占拠し、チョードリー首相や国会議員ら39人を人質に国会に立てこもる事件が発生。占拠事件のリーダーは、フィジー系政党「フィジアン党」有力議員の息子で元実業家ジョージ・スペイト氏だった。チョードリー首相の退陣を受け、同年7月に同氏の武装集団と政府の間で和解が成立し、人質は解放された。和解成立直後、犯人グループは刑事訴追されなかった。しかし、その後事件首謀者らは訴追を受け、反逆罪に問われたスペード氏は02年2月、死刑判決(その後、終身刑に減刑)を受けた。
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