2005年06月12日16時56分掲載
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成功収めるマレーシアのF1サーキット 批判の声も下火に
「マレーシアにフォーミュラ・ワン(F1)・レースが開催できるようなサーキットをつくり、F1を誘致する」??。1990年代半ばに当時首相だったマハティール前首相がそんな構想を打ち上げた時、「荒唐無稽な夢物語」「巨大プロジェクトと車好きのマハティール首相の道楽」などと批判された。しかし運営開始から6年がたったセパン国際サーキットは今、着実に実績を重ねている。(クアラルンプール=和田等)
批判の声をよそにマハティール前首相は約5億リンギット(140億円相当)を投じてF1サーキットの建設を進め、F1イベントの誘致を実現させた。
クアラルンプール国際空港のすぐ近くにあるセパン国際サーキット(SIC)で初めてのF1レースが開催されたのは1999年10月。国策石油会社ペトロナスもF1レース・チームのスポンサーとなり、多額の資金をつぎ込んで、F1を盛り上げるための「援護射撃」を買って出た。
その後、同サーキットでは今年も含めて7回、F1レースが開催されてきた。世界各地を転戦するF1レースを世界中の何百万もの人たちがテレビで観戦することもあり、同サーキットのおかげでマレーシアの国際的な知名度がアップしている。
マハティール前首相の二男で、セパン国際サーキットの会長を務めるモクザニ・マハティール氏は、シンガポール紙に対し「サーキットをつくった理由はいたって明快。マレーシアを世界にPRし、観光客を誘致するというのがその目的だが、1999年に最初のF1レースを開催して以降、現時点までをみれば、観光客を誘致するという点ではサーキットの建設は成功を収めたといっていい」と語っている。
今年3月に開催されたマレーシアF1グランプリ・レースの際、10万6000人の観客が訪れたが、 このうち40%は外国人だった。観客数は同サーキット側の目標12万人にはおよばなかったものの、マレーシア・ホテル協会がF1レース開催前後のホテル占有率が86%に達した。
同サーキットは国内レースの舞台になったり、民間会社の新車発表会の場として利用されたりしている。現在、F1レースを含め、日本スーパーGT選手権、モーターサイクル・グランプリ、ムルデカ(独立)・ミレニアム12時間耐久レースの計4つの国際レース・イベントが毎年開催されている。
同サーキット自体の業績も6年目に黒字転換し、今年は本格的な利益計上が見込めるようになるまでになっている。同サーキットが成功を収めつつある中、同サーキットに対する辛らつな批判も影をひそめた。
同サーキットの成功は、隣国シンガポールの「建国の父」、リー・クアンユー元首相(現顧問相)をして、シンガポールへのF1レースの誘致を自らが許可しなかったことを後悔させたほどだ。
いまや万事順風満帆のようにみえるセパン国際サーキットだが、気がかりなこともある。中国とバーレーンなどの国が新たにサーキットを建設してF1レースを開催地に参入し、観客誘致などの面でそのパイを奪いとろうと狙っているからだ。マレーシアはライバルの出現に当分目が離せなくなったようだ。
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