2005年06月12日19時02分掲載
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「この写真、うますぎる」とプリント拒否 盗用加担恐れる米写真店
素人のピンボケ写真は今や昔の話。市販のソフトを使ってパソコンでデジタル処理を行なえば、プロ顔負けの写真を作るのも可能だ。便利な時代になったと喜びたいところだが、米国で思わぬ問題が浮上している。あまりに立派な出来栄えのために、町のフォト・ラボ(写真店)が、プロが撮った写真を無断コピーしたと思い込み、プリントを拒否するケースが相次いでいるからだ。(ベリタ通信=江口惇)
街にはデジタルカメラがあふれている。自宅のパソコンのプリントソフトなどを使って、思い思いの写真が作りだせるご時世だ。何枚写真を撮っても、お気に入りの一枚だけを使用することもでき、さらにその写真を納得が行くまで精巧に修正もできる。自宅でプリントしている分には問題はないが、その写真をフォト・ラボに出すと、時として厄介なことになる。
米紙サンディエゴ・ユニオン・トリビューンによると、フォト・ラボが一番恐れているのは、プロが撮った無断使用の写真が持ち込まれ、その写真を知らずにプリント処理してしまうことだ。問題がこじれれば、将来、プロの写真家から著作権侵害に加担したとして、訴えられる恐れもある。
このため持ち込まれた写真が、あたかもプロの写真家の作品との印象を与えた場合、フォト・ラボの独自の判断でプリント引き渡しを拒否しているという。転ばぬ先の杖ならぬ、こうしたフォト・ラボの姿勢に迷惑を受けるのが、素人写真家たちだ。
米ネバダ州ヘンダーソンのジー・ヘルミックさんは、TVコマーシャルのオーディションに使うため、息子の写真をデジタルカメラで撮った。ソフトを使い修正も加えた。ネットで大手小売店ウォ ルマートのフォトラボにアクセスし、プリント用の写真を送った。しかし、フォト・ラボに写真の受け取りに行ったところ、店員はプリント写真の引き渡しを拒否した。
「どうして?」と、ヘルミックさんは首をひねった。
店員は、写真はプロが撮ったと考えられる。だからプロの写真家が使用を許可したとする署名の書類が必要、と話したという。自分が撮ったものだと食い下がったが効き目なし。結局、息子の翌日のオーディションには、自宅でプリンターしたものを使った。
全米展開しているウォルマートは、写真の著作権問題には、神経を遣っている方だ。これまでにも結婚式の一部の写真が、プロが撮ったように見えるとの理由で一時プリント写真の引き渡しを拒否したことがある。ウォ ルマートの広報担当者は「プロの写真家の権利を守らなければならない。プロもしくはスタジオで撮られたと思われる写真はプリントしません」
1999年に別の大手小売店Kマートは、プロの写真を無断使用としたとして写真家団体から提訴され、2000年に10万ドル(約1000万円)を払って和解している。この訴訟は、その後フォト・ラボにとって大きな警告になった。
一方、インターネットやスキャナーでプロの写真を無断ダウンロードするのは日常的に行なわれている。プロ写真家の団体の話では、こうした行為を防止するソフトは開発されておらず、有効な対策が打てないのが現状という。このため一般利用者やフォト・ラボ関係者に対し、著作権を持つ者から許可を得ずに、写真を使用するのは違法であることを周知させることが必要だとしている。
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