2005年06月16日17時32分掲載
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中国政府の信任で曽蔭権氏が事実上当選 香港行政長官選挙
【香港16日=富柏村】3月に辞任した董建華・行政長官の後任を選ぶ香港特区行政長官選挙は、7月の正式な選挙を待たず董氏の辞任で臨時行政長官を務めていた曽蔭権・前政務官の事実上の当選が決まった。投票権を有する選挙人800人により実施される同選挙に立候補するには、選挙人100人以上の推薦が必要。これに対し曽氏は15日、700人を超える選挙人から推薦を集めたことを発表し、他の候補が100人以上の推薦を得ることが事実上不可能となり曽氏の当選が決まった。曽氏の任期は董・前長官の残した07年6月まで2年間。
行政長官選挙は無記名投票だが、この推薦については推薦人の名前が公表できる。董氏に続き曽氏も中国政府の事実上の信任を受けており、親中派が大多数の選挙人制度では、選挙前にこの推薦をするかどうかが中国政府に対しての「踏み絵」となっている。今回は中国政府にとって厚い信任を与えた董氏の事実上の更迭を受けての出直しで、公務員出身で民主派にも太いパイプのある曽氏の、広い支持を集めての当選が期待された。
曽氏の当選は董氏辞任時から確実視されていたが、親中派の中でも左派の間からは、曽氏が1997年までの英国統治での生え抜き官僚であり、英国政府から爵位を授かっていることなどで曽氏への反発も少なくない。そのため中国政府関係機関や国営関連企業からは選挙人に対して曽氏支持を促す電話作戦などがかなり頻繁に行われ、16日の蘋果日報は、北京政府の香港マカオ弁公室の廖暉・主任が自ら深センで曽氏支持拡大のため陣頭指揮に当たった、という情報を伝えている。
現行の行政長官選挙は、この推薦制度により実質的には記名選挙。香港大学法学院副院長の戴耀延教授は、この制度が公民権の国際公約に違反する、と指摘し、親中派の選挙人の中にも「選挙は無記名で公平に行われるべき」として、無投票選挙となることに反対して立候補を準備していた民主党党首を推薦するなどの動きもあった。
今回の2年の任期は曽氏にとって、市民の香港政府に対する信頼の回復、民主派と親中派に分断された政治状況の安定が急務。それをどうこなすかで、今回は董・前長官のリリーフ役である曽氏が07年7月から5年の任期で続投できるかどうかが決まる。中国政府も曽氏を信任するか、別の「愛国派」を次期行政長官の候補とするかを見極めることになる。
また香港基本法では特区成立から10年を迎える07年に行政長官選挙での普通選挙実施が可能であったが、不安定な政治情勢で中国政府は全人代常務委員会の決定として07年の普通選挙実施は見送ることを決定。市民の間では、現行の対中国政府の信任投票に近い行政長官選挙制に対して不満もあり、曽氏の行政手腕の如何によって普通選挙実施を求める世論が高まる可能性もある。
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