2005年06月29日06時49分掲載
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執拗ないじめの背後に家庭内暴力 アリゾナ大が分析
米国の学校でも児童、生徒へのいじめが続いている。教育者たちは長年、いじめの原因を研究してきたが、ひとつはっきりしていることは、学校は、軍隊や刑務所のように、いじめが必然的に起きやすい場所ということだ。米アリゾナ大は、いじめを行なう者は、家庭で暴力を振るわれる経験をしているとの研究結果を明らかにしている。彼らは、学校では、逆にそれをまねて弱い者を標的にいじめを行なっているという。一方、いじめを受ける子どもにとっては学校は「拷問室」でもある。(ベリタ通信=有馬洋行)
米科学誌サイエンティフィック・アメリカン・マインドによると、オーストリアの作家ムージルは、1906年に出版された自著「テルレスの惑乱」の中で、寄宿学校内でいじめを受ける少年を描いているが、こうしたいじめは、現在でも依然続いている。
米カイザー・ファミリー財団らが発表した2001年の調査では、米国の8歳から11歳の子どものうち74%が、学校でいじめがあると話している。12歳から15歳は86%になっている。
いじめは、弱い者をグループでいたぶる傾向を持つ。1999年に米コロラド州のコロンバイン高校で、少年2人が銃を乱射し、生徒12人、教師1人が死亡する惨劇が起きた。この事件も2人がいじめを受けたことが犯行の動機とのひとつになっているという。
学校でなぜいじめが起きるのか。いじめは階級社会の縮図のような場所で起きやすいという。力がものをいう小さな世界では、いじめは自然発生する。刑務所や軍隊のように、学校も年長者や、暴力の強い者が幅を利かしやすい。目的は、強さを誇示することで、学校内の“リーダー”の位置を確保できるからだという。
アリゾナ大学が500人の中学生を対象にした調査では、いじめに参加しやすい子どもは、家庭内で両親の厳しい体罰を経験していることが明らかになっている。またしばしばTVの暴力シーンを見ており、さらに家庭内にモデルとなる人物がいないことも指摘されている。
▽成人になっても後遺症
いじめが行なわれると、周りにいる子どもたちは、自分が次の標的になるのを恐れて、いじめる側の立場につきやすい傾向がある。従っていじめが起きていることを見てみないふりをする者も多く、教師や両親にも秘密にしがちだ。
いじめを受けた者は、成人に達しても、人との信頼関係を築くのが困難だったりする後遺症が残る場合もある。いじめを防止するのは、父兄や教師がいじめを早期に見つけ対処することが必要だ。
いじめを行なう者は、弱い者を物色している。教師が教室で、ある生徒を見くびるような発言をしたり、宿題を採点して返す際に、成績順に返すようなことは絶対に避けるべきだという。
いじめを生徒自らが防ぐためには、相手の目を見つめ「やめろ」と強く言い放つことなどが必要とされる。一方、家庭内では、子どもたちは学校内でいじめを受けていることを親に話したがらないので、親が子どもたちの示す態度を見抜くことが肝心という。
具体的には、(1)理由もなく学校に行きたがらない(2)不安な感情を示し、睡眠も十分でなく、悪夢にうなされたりする(3)特に学校のある日には、頭痛、腹痛などといったあいまいな症状を訴えたりする──などがある場合は、親が話し合いの努力をする必要がある。
いじめを受け、自殺した14歳のカナダの女子生徒は「助けを求めても、悪くなるだけだろう。私が卑屈にふるまっても、いじめはやまないだろう」との絶望的な書き置きを残していた。いじめの根は深い。
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