2005年07月01日11時07分掲載  無料記事
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豪州与党が24年ぶりに両院で過半数占める ハワード首相の“独裁政治”も可能に

 【アデレード(サウスオーストラリア州)1日=木村哲郎】昨年10月に行われた国政選挙で半数が改選されたオーストラリア連邦議会の上院議席の受け渡しが1日に行われる。上院76議席の内訳は、与党保守連合が39議席(自由党33・国民党6)、野党第1党の労働党が28議席、第3勢力の民主党と緑の党が各4議席、そしてキリスト教系保守のファミリー・ファースト党が議席1となる。ファミリー・ファースト党は国政の場に登場するのは今回が初めて。与党保守連合は下院(150議席)で87議席を確保しており、与党が両院で過半数を占めるのは、1981年以来24年ぶり。これによりハワード首相は実質的な“独裁政治”も可能になり、オーストラリア国政において「7月1日」が大きな転換点になる可能性もある。 
 
今回の事態で影響が見られるとされるのは次の4分野だ。 
1)通信会社テルストラの完全民営化 
 半官半民のテルストラを完全民営化することによって、政府は財政負担を減らそうとしている。しかし、地方に基盤を持つ与党第2党の国民党は、民営化により地方でのサービスが落ちるとして反対している。だが、前回の選挙で議席を減らした国民党の声よりも、大幅に議席を伸ばした自由党の声のほうが勢いがある。次期首相の第1候補とされているコステロ財務相は、民営化に伴う売却によってできる3千5百万豪ドル(約29億4000万円)で、公務員の積み立て年金(スーパー・アニュエーション)資金を整えようとしている。 
 
2)メディア・オーナーシップ 
 外資規制のあるオーストラリアのメディア界だが、その規制をなくすことによって、現在の「ぬるま湯体制」から公平な競争力を高め、より水準の高い報道を国民に与えると政府はしている。しかしその陰には、現在オーストラリア国籍を持っていないメディア王ルパード・マードック氏(米国籍)の存在が見え隠れする。 
 
3)大学生の学生組合への参加が強制でなくなる 
 組合資金が左翼系の学生運動に使われているという政府の意見を反映し、ネルソン教育相は「学生組合への参加は組合を使う学生のみが入ればいい」と語っている。しかし、組合への資金不足などによりスポーツ活動が影響を受けると予想されるため、与党内からもスポーツ活動に支障が出ないように調整をすべきだという声が出ている。ただ、組合費以外の学費は無利息のローン(就職後に返済)を使い、強制されている組合費のみを払う学生がほとんどのオーストラリアでは、たとえ年に数百豪ドルであっても、低所得層などの学生にとっては高等教育への力強い後押しになる。 
 
4)労使関係システムの改善 
 州単位で行われている労使関係裁定システムの解体は、ハワード首相の長年の夢であったといわれている。同システムを連邦レベルに引き上げ、不法解雇保護の廃止などで労働組合の力を弱めることにより、強い経済の更なる発展を進めようとしている。 
 だがこれに対し野党労働党は、労働者の収入と社会的地位が低くなるとし反対。また与党内からも、労働組合とのつながりが強い労働党が政権復帰したときに自らへのリスクが高いとして、慎重にすべきだとの声も出ている。民放9チャンネルの世論調査でも、5対2の割合で反対が賛成を上回っている。 
 
 次期国政選挙までの期間は2年半のオーストラリア。一時は選挙後すぐにでも首相の座をコステロ財務相に譲ると思われていたハワード首相だが、前回選挙で地滑り的勝利を果たしたことで、続投に色気を見せていることからも、「7月1日」がオーストラリア国政にとって大きな転換日となることもあり得る。しばらくの間は与党の動きから目が離せない。 


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