2005年07月02日18時20分掲載  無料記事
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英国で子どもの自宅学習が急増中 学校への信頼の低下も一因

 英国で、学校に通わずに家庭で教育を受ける子供たちが増えている。政府の調査によれば、ホーム・スクーリングで学ぶ5歳から16歳までの子供たちは1999年では1万2000人だったが、2004年では2万1000人に増加した。教育専門家らは、親が学校制度に対する信頼感を失っているため、と分析している。(ロンドン=小林恭子) 
 
 英紙サンデー・タイムズによると、米国で起きている学校教育離れの傾向が英国でも起きている。米国の子供たちは20人に1人がホーム・スクーリングになっており、自宅で親が学習の面倒をみることが多い。 
 
 英国では、近年、公立学校の教育の質の低下が問題視されており、私立の学校を希望する親が増えてきた。しかし、私学の教育費は高額であるため、裕福な家庭でなければ利用できない。私立校へ通わせるだけの資力はないが、一人一人の子供の学習速度に応じた質の高い教育を受けさせたいという事情から、自宅学習が増加している。 
 
 ホーム・スクーリングに関してインターネットでアドバイスを提供している「ホーム・エデュケーションUK」のマイク・フォーチュンーウッド氏は、この現象を、親たちの「静かな革命」と呼んでいる。「学校よりも家庭での学習の方が子供にとって有益だ、と考える親が増えている。異なる学習能力の子供たちが一堂に集まって一様に学ぶ、という学校教育制度に対する不信感も高くなっている」 
 
 英国では、親には子供に教育を受けさせる責任があるが、学校で教育を受けさせる必要はなく、ホーム・スクーリングも合法な教育方法の1つとなっている。また、教える内容も親が決定できる。家庭で学ぶ子供達の教育の進ちょく状況は、地方自治体に定期的にモニターしてもらうこともできるので、一定の質が保たれるという。 
 
 ホーム・スクーリングを推進する団体らは、2015年までに家庭で学ぶ子供たちの数は15万人に増えると予想しており、この場合には30人に1人の子供が該当することになる。 
 
 英BBCラジオのアナウンサーであるジェニー・リー・グレースさんには3人の子供がいるが、そのうちの年かさの二人の子供に自宅で教育をしている。といっても、グレースさんは孤立しているわけではない。 
 
 グレースさんのように家庭で子供たちに教育を受けさせることにした親たちと連絡を取り合い、家庭での教授法を研究しているグループの会合に出たりしている。 
 「学校制度では子供は十分な教育を受けることができない。グループ行動が要求されるような職業、例えば軍隊に入るというのでもない限り、それぞれの個性を生かした教育を受けることが子供にとって必要だ。そのためには学校以外の場所で学習するのが好ましい」とグレースさん。 
 
 9月には、英国で初のインターネット上の中・高等部「インター・ハイスクール」が開校する。運営するのは英ウエールズ地方の物理教師ポール・ダニエル氏だ。 165ポンド(約3万3000円)の月謝を払うと、子供たちはオンラインで授業を受ける。 6月現在、40人以上の子供たちが入学登録を済ませたという。ダニエルさんは、開校までに入学者はさらに増える、と見込んでいる。 
 
 
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読者からご指摘を受け、より正確な内容とするため、第5段落を以下の通り修正致しました。2006年02月24日。 
 
■元の記事 
 英国では、子供は教育を受ける義務があるが、学校に通う義務はなく、ホーム・スクリーングも合法な教育方法の1つとなっている。また、教える内容も親が決定できる。家庭で学ぶ子供たちの教育の進ちょく状況は、地方自治体が定期的に審査をするため、一定の質が保たれるという。 
 
■修正後 
 英国では、親には子供に教育を受けさせる責任があるが、学校で教育を受けさせる必要はなく、ホーム・スクーリングも合法な教育方法の1つとなっている。また、教える内容も親が決定できる。家庭で学ぶ子供達の教育の進ちょく状況は、地方自治体に定期的にモニターしてもらうこともできるので、一定の質が保たれるという。 


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