2005年07月13日03時03分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200507130303543

豪州と似すぎた国旗に不満噴出 NZで図柄変更案が浮上

 独立国家を象徴する「顔」となる国旗が、他の国、しかも隣国のそれと酷似し過ぎていたらどうだろう。何かにつけ、紛らわしく、あまり気分のよいものではないだろう。同じ母親(英国)から生まれ、共に南半球育ちの「オーストラリア」と「ニュージーランド」の国旗が、まさにその「そっくりさん」関係にある。そこで今、スポーツ界で活躍したニュージーランドの名選手らの間から「国旗の図柄を一新し、国民の団結心を高めよう」との提案があらためて浮上、具体的な図柄をめぐる論議まで出始めている。(ベリタ通信=志岐隆司) 
 
 オーストラリアの通信社AAP(電子版)によると、国旗変更論議の火付け役は、1980年代に大活躍したクリケット界の名選手、リチャード・ハドリー卿。速球王として鳴らしたハドリー卿は、最大の好敵手オーストラリアを散々痛めつけ、国民的英雄となった。それだけに国際試合などで掲揚される国旗の象徴性と重要性を身にしみて知っている。 
 
 そのハドリー卿がこのほど、「わがニュージーランドの国旗と豪州の国旗のどこが、どう違うかを分かっている者は世界では皆無に近い。違いを言えない自国民さえいるのは驚きだ」と国旗への不満を示した上で、「今こそ、国旗の図案を一新すべき時」と呼び掛けた。 
 
 ニュージーランドの国技ラグビーの名選手だったコリン・“パインツリー”・ミーズ氏もこの意見に賛意を示すとともに、「国際試合の場で、酷似した両国旗が並んで掲揚されると、戸惑いが起き、今ひとつ闘争心がわいてこなかった」と振り返る。 
 
 オールブラックスとはニュージーランド代表のラグビーチームで、黒のジャージーに付いた銀色の「シダ」のマークが特徴となっている。 
 
 濃紺色の中、左端上部に(“生母”を示す)ユニオンジャック、右半分と下部に配置されたいくつかの星。確かに、両国の国旗を並べて眺めても、とっさにその違いを言い当てるのは難しい。大きな違いは(1)星の数。ニュージーランド(NZ)が4個に対し、豪州は2個多く計6個(2)星の色。NZは白の縁取りの中が赤色。豪州の6個はすべて白色(3)星の角数。NZの4個はすべて5角。豪州は5角星が1個と7角星が5個──。 
 
 両国旗の見た目の紛らわしさ、と同時にニュージーランド国旗の“知名度”の低さが証明されたのが、最近開催された全米オープンゴルフの最終日だった。屈指の難コースに挑み、タイガー・ウッズの猛追をかわし、見事、栄冠を手にしたのは、ニュージーランドのマイケル・キャンベル。 
 
▽著名人も運動に参加 
 
 会場やテレビ画面には同選手名と共にニュージーランド国旗が登場したが、同国旗に気をとめた者はほとんどいなかった。注目されたのはキャンベル選手が着ていたシャツの背中に染め抜かれていた同国先住民マオリを象徴する図柄だった。マオリの血を引く同選手の意図は国民に大きな感銘と勇気を与えたという。 
 
 1907年、英植民地から自治領になったのを機に制定された現国旗に代わる新しい図柄には、何がふさわしいのだろうか。オールブラックスの象徴である銀色の「シダ」、同国の国鳥「キーウィ」、南半球の夜空に輝く「南十字星」、マオリ語の国名の一部になっている「たなびく白雲」、そしてマオリを象徴する伝統的図柄──などが挙げられている。 
 
 有名スポーツ選手たちだけでなく、元総督や音楽家らの著名人たちも今回の運動に参加し、「新たな感動と団結力・忠誠心の源になる新国旗の制定」に向け、国民の理解と賛同を求めている。新国旗実現の見通しは不明だが、著名人の中からは現国旗の制定から100年を迎える2007年が「好機」との声が出始めている。 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。