2005年07月13日14時45分掲載
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やはり80歳の養子話は無理だった! イタリア式美談劇の結末
イタリアで昨年夏、80歳の孤独な老人が、ユニークな新聞求人広告を出した。内容は、“養子”として自分を家族に迎え入れてほしいというもの。身寄りがなく、妻にも先立たれたという環境が大きな反響を呼び、一躍“時の人”になった。その後受け入れ先が見つかり、「祖父」としてある家庭に入った。しかし、その後の顛末は皮肉な展開になった。(ベリタ通信=エレナ吉村)
クリスチャン・サイエンス・モニター紙によると、話題の主は、ジョルジオ・アンジェロッシさん。イタリアの新聞に「当方、退職した老齢の音楽教師/祖父として迎えてくれる家族を求む/生活費は持つ」という広告を出したのが2004年8月のこと。妻とは1992年に死別していた。
イタリアは家族の絆が強いと伝統的に言われていたが、実際は核家族化が進み、1人暮らしの老人が増えている。アンジェロッシさんの訴えは、国民全体が無視してきた老人問題を呼び起こし、そのうしろめたさもあって、イタリアのみならず世界中から同情が集まった。
このまま話が進めば、美談として語り継がれるはずだった。ところがアンジェロッシさんを“養子”に迎え入れた家庭に高額の未払い医療費を残して、ことし5月に突然姿を消したころから、風向きがおかしくなった。歯科の医療費の未払いは3600ドルに達していた。
間もなく、ミラノの老人施設に身を隠しているのが見つかったが、その後の調べで、アンジェロッシさんが過去に窃盗や詐欺で4回摘発されていたことなどがわかった。また彼が、大学でクラシック音楽を専攻したのは事実だったが、音楽教師として働いていたとのふれこみは、事実ではなかった。
さらに、アンジェロッシさんが歯科の医療費代として逃げ出した家族宛てに送った小切手も、その後逃亡中に身を寄せた別の家族から盗んだことも発覚。新家族との関係は、決定的に冷却した。アンジェロッシさんは現在、ミラノの老人施設で軟禁状態下に置かれている。
▽「彼はわれわれすべてをだました」
米紙シアトル・タイムズに、アンジェロッシさんが、イタリア人夫妻との間で養子縁組が決まり、18歳と16歳の二人の“孫”らとともに楽しそうに肩を組んでいる写真が掲載されている。撮影されたのは、縁組が決まった直後の04年9月。この頃が幸福の頂点で、イタリア人夫妻は、彼にサングラスを買ったり、旅行に招くなど、家族水入らずの生活を続けていた。
好意と同情心から、アンジェロッシさんを祖父として迎え入れただけに、イタリア人家庭の主婦マルレナ・リバさんは、意外な展開に「彼は、われわれすべてを騙した」とがっかり。
アンジェロッシさんが、初めから相手を騙そうとしたのか、今のところはっきりしない。しかし、新家庭では、“孫”たちがあまり祖父と接触することも少なかったようだ。アンジェロッシさんは、マルレナ・リバさんに親しみを感じ、彼女のあとを子どものようにつきまとったという。
「家の中で緊張があった。多分を夫を苛立たせたようだ。それで家を出た」と話すアンジェロッシさん。部外者には推し量れない微妙な問題が家庭内にあったのかもしれない。ともかく、1年前にイタリアを沸かした美談劇は、予想外の結末を迎えようとしている。
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