2005年07月27日16時17分掲載  無料記事
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次の標的は伊、ポーランドか? アルカイダ犯行説強まる中で

 ロンドンで起きた同時多発テロは、公共交通機関を標的に自爆テロを敢行していることから、同じ手法を多用する国際テロ組織アルカイダが犯行に関与した可能性が浮上している。米英など多国籍軍が駐留するイラクでも、アルカイダ系のグループが、最近頻繁に自爆テロを行なっており、テロ専門家は、今後も対テロ戦争で米国に協力した同盟国のイタリア、ポーランドなどで、同様の自爆テロが起きる恐れがあると警告している。(ベリタ通信=有馬洋行) 
 
 米サンディエゴ・ユニオン・トリビューンによると、米民間研究機関ランド研究所の上級顧問、ブライアン・ジェンキンス氏は、2001年の9・11米同時多発テロ以降、アルカイダの主要メンバーの殺害・拘束、資金源の凍結などでアルカイダ本体は弱体化した。しかし、米国や、サウジアラビアと戦う「ジハド(聖戦)」を実行しているアルカイダの思想は、世界各地で「小アルカイダ」を作り出し、彼らのテロ実行の決意は、依然衰えをみせていないと指摘する。 
 
 現在、アルカイダは新旧の要員を、インターネット上の数千に上るウェブサイトで結びつけているという。 
 
 彼らは、大量かつ無差別に殺害する決意を固めており、その目的のためには、公共交通機関が「最適な標的」になる。 
 
 こうしたテロ行為が、再び米国で起きる可能性があるのか? ジェンキンス氏は「勿論だ」と強調する。1997年、ニューヨークの地下鉄で自爆テロが計画されたが、実行犯の1人が、怖気つき、当局に通報したため、未然に回避された。また04年には、マンハッタンにある地下鉄の駅に爆弾を仕掛ける計画が摘発された。このように米国は、常にテロ攻撃を受ける可能性がある。 
 
 一方、米ロサンゼルス・タイムズによると、シンシナティ大学のミア・ブルーム准教授(政治学)は、イラク戦争で、欧州で眠っていたイスラム過激派の細胞が目を覚ましつつあると指摘。またアフリカ・中東などから移民として欧州に大量に流入しているイスラム教徒が、各国で差別的な待遇を受けていることを挙げ、テロ組織が、こうした扱いに不満を持ったイスラム教の若者に接近していると述べた。 
 
 サウジアラビア出身のウサマ・ビンラディン氏に率いられるアルカイダは、米軍の駐留を認めているサウジアラビア王制の打倒を明言している。しかし、現在は、サウジアラビアが世界各地の過激派への資金供給源になっていることを考慮し、イラクでの反米テロに重点を移している。 
 
 サウジアラビアからは、シリア経由で、多くの若者がイラクに入り、自爆テロを敢行している。ネット紙の「ジハドウェブ」によると、過去6カ月でイラクで起きた自爆テロの70%は、サウジアラビア人という。このウェブサイトでは、どうやってイラクに入国するかの情報も提供している。 
 
 ブルーム准教授は、欧州とイラクで自爆テロが、彼らの「武器」になっていると指摘。その上で、ロンドンでの同時多発テロは、イラクでの多国籍軍への攻撃に続き、欧州でテロの「第二戦線」を作るのが狙いではないか、と分析する。その狙いは、米国と同盟国を切り離すためという。テロ専門家は、同盟国からの派遣軍を撤収させるのが、アルカイダの欧州でのテロの目的であるならば、次の標的は、イタリア、ポーランドになるのではと予想している。 
 
 9・11同時テロ以降、東南アジアから欧州にかけて、3カ月に一回の割合で、世界のどこかで大きなテロ事件が起きている。アルカイダ要員は、200〜300人という小規模なもので、その影響力は先細りの状態だ。従って、組織自体が危険というよりも、そのイデオロギーが世界に広がり、イスラム教の若者に影響を与えることのほうが危険という。 


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