2005年08月01日01時58分掲載
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移民当局の差別的な対応を叱る! 4人の若者の強制送還認めず
4人の若者は、子どものころ親に連れられ米国に不法入国していた。それが発覚し、不法移民として、メキシコに強制送還されるものと覚悟していた。しかし、予想外のことが起きた。米アリゾナ州フェニックスの移民判事がこのほど、4人の米国滞在を認める決定をしたのだ。「気を失うと思った。すごく驚いた」と、若者の1人が語った。不法移民に対して、米国の移民当局の厳しい対応が目立っているが、移民判事は、ヒスパニック(中南米系)という理由だけで、4人に差別的な対応を取った移民当局を逆に厳しく断罪した。(ベリタ通信=有馬洋行)
各種報道を総合すると、この若者は、ルイス・ナバさん(21)、ユリアナ・ウイコチェアさん(20)、ハイメ・ダミアンさん(20)ら4人。いずれも、フェニックスのウィルソン高校の生徒で、放課後、ソラー発電のボートを作る部活動に参加していた。4人は当時16、7歳だった。同部は、ソラーボートを競う地区コンテストで優勝し、2002年6月、ニューヨーク州バッファローで開催される全米大会決勝戦に参加するため現地を訪れた。
時間を割いて4人を含む部のメンバーは、ニューヨーク州とカナダ国境をまたぐナイアガラの滝の見物に出かけた。これが、4人の運命を暗転させることになるとは、誰も予想してはいなかった。
米国の国境移民審査官は、引率の教師が、高校のID(身分証)だけで国境を越えられるかとの一般的な質問に対し、生徒の中にヒスパニック系が混じっているのに目をつけ、ナバさんら4人を長時間にわたって尋問した。この過程で、4人が幼少の時に、メキシコから親に連れられて不法入国していた過去が浮かび上がった。
4人の供述によると、この際、審査官は、ヒスパニック系であることに対し差別的な発言をしたという。また尋問の最中、審査官は、母親に電話をしたいとの願いや、弁護士を呼びたいとの要求をことごとく拒否したという。
4人は、2〜7歳との時に入国し、その後は、米国の小中高校に通っていた。移民当局は、4人の強制退去を主張したが、4人の弁護士は、フェニックスの移民判事に対し、4人は年端も行かぬ子どもの時に親に連れてこられたとして、温情的な判断を求めた。審理は3年間続いた。
7月14日、リチャードソン移民判事は、移民審査官が、ヒスパニック系という外観だけで、4人に尋問したことは、デュー・プロセス(適正な法の手続き)に反するとして、移民当局の対応を批判、結果として4人の滞在を認める決定を下した。
4人の弁護人のひとり、ジュディ・フラナガンさんは「極めて大きな勝利だ。われわれは、4人が退去しなければならないだろうと考えていた」と評価。また「このような形で(移民当局が)子どもたちを扱うのは言語道断だ」と批判した。
4人は既に高校を卒業し、大学や短大などに通っている者もいれば、結婚している者もいる。移民判事の判断が出るまでの3年間は、4人にとっていばらの道だった。親戚や友人のいないメキシコに強制退去されるのではとの不安が、常に彼らの心を暗くした。
4人は、米国の国籍を取得するのを願っている。しかし、移民当局が、今回の決定を不服として上訴する可能性もあり、予断は許さない。米議会には、不法入国した者でも、米国の教育を受けている場合は、米国滞在を認めるとの法案が提出されているが、反移民感情の高まりの中で、法案成立のめどは立っていない。
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