2005年08月05日00時43分掲載  無料記事
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殴打事件の元マレーシア警察長官がアンワル元副首相に謝罪

 【クアラルンプール4日=和田等】マレーシアのマハティール首相(当時、現在80歳)に対する「汚職・取り巻き重用主義・縁故主義」批判を展開したことから、1998年9月に解任されたアンワル元副首相兼財務相(58)が同9月に逮捕、拘束された後、取り調べにあたったラヒム・ノール警察長官(当時)から殴打され重傷を負わせたことに対し、ラヒム元警察長官が3日、元副首相に謝罪した。元副首相は左目に黒いあざができたことから、この殴打事件は「ブラック・アイ」事件と呼ばれ、その痛々しい姿が報じられたのを機に、マハティール政権(当時)に対し国際社会から批判が起きたほか、国内では首相辞任を要求する街頭デモが発生した。 
 
 地元英字紙サンによれば、元副首相はこの殴打事件をめぐり、当時の治安の最高責任者だったマハティール前首相(兼内相)とラヒム元警察長官、それに政府を相手取って損害賠償と公の謝罪を求める民事訴訟を起こしていた。これに対し元警察長官は3日、元副首相に公式謝罪し、賠償金(額は未公表)を支払うことに同意した。これを受けて元副首相は元警察長官への訴えを取り下げたのに続き、マハティール前首相と政府に対する謝罪要求も放棄した。 
 
 ジョセフ・ティン弁護士が読み上げた元警察長官の謝罪文次の通り。 
 
「私、ラヒム・ノールは1998年9月20日夜、アンワル元副首相に対して行なった暴行に対する責任が自分にあることを認めます。あなたとあなたの家族が被った苦痛と痛みに深い遺憾の念を表明するとともに、あなたとあなたの家族に心から謝罪します」。 
 
 アンワル元副首相は訴訟の取り下げにあたり、「あまりに多くの年月が経ったので、この件をこれ以上引き延ばすことには意味がない。痛みや苦悩、屈辱は計り知れないほど大きなものだったので、訴訟の取り下げを決意するのは容易なことではなかったが、私たちは前に進まなければならないという主張に同意した。すべての人にとってこれが教訓になれば、との願いからラヒム元警察長官の謝罪を受け入れることにした」との感想を明らかにした。 
 
 この決着に対しては「元副首相は法廷で徹底的に争うべきだった」(国立マラヤ大学の政治学者ラマサミー氏)と失望を表明する声が出るとともに、「マハティール前首相は、元副首相が拘留中に負った負傷を自傷によるものだと言い張ったことに対して元副首相に謝罪すべきだ」(裁判官と弁護士に関する国連特別代表を務めたパラム・クマラスワミー氏)との主張が出ている。 
 
 1998年の逮捕後、職権乱用と異常性行為の罪状で起訴されたアンワル元副首相は、異常性行為の罪状に関しては2004年9月に連邦裁(最高裁に相当)が無罪放免の裁決を下したことを受け、職権乱用の罪で受けた禁固6年の刑を終えた後に自由の身となった。現在、元副首相はオックスフォード大学聖アンソニー校の上級準教授と米国ワシントンのジョージタウン大学の教授を務めている。 


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