2005年08月10日13時47分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200508101347443
ネット上で記者の解雇撤回訴える マイアミ・ヘラルド紙経営陣に
米紙マイアミ・ヘラルドのコラムニスト、ジム・デフィード記者(42)が、取材相手の電話を無断でテープに録音したとして、会社側から解雇された。フロリダ州の法律では、取材の際に録音する場合は相手の了解が必要という。これを犯せば罪に問われる。一方、記者仲間は、会社側が性急にデフィード記者を解雇したと抗議、ネット上に「ジム支援のためのジャーナリスト」と題するページを作成、会社側に解雇の撤回と、再雇用を求めている。(ベリタ通信=江口惇)
デフィード記者の解雇は、7月27日にマイアミ・ヘラルド社のロビーで、汚職の疑いがもたれていたアーサー・テーリ元マイアミ市局長(58)が銃で自殺したことと関係している。
同日、テーリ元局長は、長年の知り合いであるデフィード記者に電話をかけた。元局長は、数日前に汚職容疑で罪状認否を行なうなど、追い詰められた状態の中で、同記者に電話をかけてきた。電話の会話は長く続いたが、デフィード記者は、この会話の一部を録音に取った。この際、記者は、元局長に録音することを知らせなかった。
電話が終了する直前になって、元局長が新聞社内から記者に電話をかけていたのがわかった。元局長は、この電話を切った直後、銃で自殺した。自殺の原因は判明していないが、同日中に週刊紙マイアミ・ニュー・タイムズが、元局長の性的スキャンダルと麻薬使用に関する記事を公表することになっていた。
マイアミ・ヘラルド紙の社主や編集幹部は、デフィード記者の行為が記者の倫理規定を逸脱し、フロリダ州法に抵触するとして、解雇を発表した。この突然の解雇に抗議して記者仲間が立ち上がり、ネットのページ「ジム支援のためのジャーナリスト」上で、会社側に再考を求める嘆願書を公表した。
この中で「新聞社がジム・デフィード記者に対した行なった扱いに関し、悲しみ、不満、失望の念を表明する」と述べ、記者仲間に嘆願書へのオンライン署名を行なうよう呼び掛けた。これまでにピューリッツアー賞受賞者や、ロサンゼルス・タイムズ、ワシントン・ポスト紙などの記者ら300人以上が賛同し、名を連ねている。
マイアミ・ヘラルド紙による解雇で、録音テープの存在を知った検察当局は29日、州法に触れるかどうかをめぐり、デフィード記者から事情聴取した。テープの中に何が録音されているかは明らかにされていない。
ロサンゼルス・タイムズ紙によると、デフィード記者は会話を録音した理由について「私の気持ちに中に、元局長に何かが起きているという感じがあった。911(警察)への通報を録音するのに似た感じで、本能的に記録しようと思った」と話している。
ボストン・グローブ紙のチャーリー・サベージ記者は「デフィード記者は、あわてて間違いを犯したが、新聞社側も性急に動き、彼を解雇した」と述べた。
南カリフォルニア大学でメディア法を教えているマイケル・オーバリング弁護士は、「もし記者がニュースの収集の中で、法律を犯していることになれば、新聞社側にも法的責任が生じる。これを回避するために、会社側は、すばやく、修正の行動を取ったことを証明することを望むものだ」と話している。
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。