2005年08月12日00時29分掲載
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怒り抑制できなかった 金属バットで殺害した米野球少年
少年野球の試合で常勝チームが、最も弱いチームに敗北した。常勝チームの先発投手A(13)が、試合後どんな気持ちでいたか、誰もわからない。その彼を15歳の少年がからかい、少し口論があった後、少年がAをこづいた。逆上したAは、近くにあった金属バットで、年上の少年を2回殴った。少年は数時間後、収容先の病院で死亡した。このAに司法の裁きが下った。米カリフォルニア州ロサンゼルス地裁は7月28日、Aの非を全面的に認め、12年間にわたる少年矯正施設への入所を命じた。(ベリタ通信=有馬洋行)
各種報道を総合すると、事件が起きたのは4月12日。ロス近郊パームデールで少年野球チームのエンジェルスとドジャーズの試合が行なわれた。エンジェルスはここまで7戦全勝。ドジャースは最も負け越しているチームだった。エンジェルスの先発投手Aは不調で、途中で降板し、試合は負けた。
試合後、Aを含むエンジェルスの選手や応援きた父兄らが、売店の前で列を作っていた。そこで惨劇は起きた。元少年野球チームに所属していたジェレミー・ポーク君(15)が、Aに言葉をかけた。試合に負けたことでAをからかったという。目撃者の話では、ポーク君が、Aを数回こづいた。Aは近くにあったアルミ製のバットを持ち出し、最初に脚を、次いで頭をバットで殴打した。ポーク君は、家族らが見ている前で床に倒れた。2時間後、病院で死亡した。
Aは殺人罪に問われた。Aはどういう少年だったのだろうか。審理の中で、弁護側証人として出廷した数人の関係者は、Aは礼儀正しく、素晴らしい子どもだったと証言した。またポーク君が生前、よくいじめを行なっていたとの証言も飛び出し、ポーク君の遺族が、被害者を裁こうとしていると憤慨する一幕もあった。
Aはアフリカ系米国人(黒人)。Aは法廷で「ポーク君に殴られると思った。怖かった」と供述する一方、殺害する意図はなかったと述べた。Aは身長155センチ、体重40キロと小さく、逆にポーク君は身長177センチ、体重86キロと体格差があった。弁護士は、Aの行為は自己防衛に当たるとして寛大な刑を求めた。
検察側は、法廷でAは野球選手としてバットを振るうことがいかに重大な状況を生み出すか、知っていたと主張。判決でリチャード・ナランホ判事は、こうした主張を全面的に受け入れた。判事は、「少年は、試合に負けたことに腹を立て、苛立っており、からかわれたくなかった」と述べ、こうした怒りを抑制できない性格は、再び同じような犯行を行なう可能性があるとの認識を示した。その上でAへの判決は「社会の防衛」のためと述べた。
28日の判決は、少年への量刑としては、最高の12年間にわたる矯正施設への入所だ。しかし、品行がよければ、25歳の誕生日前に仮出所の可能性もある。少年矯正施設は、ギャングや常習犯の少年が収容されており、Aを調べた心理学者は、Aを同施設に入所させることには反対する意見を述べていた。同学者は、Aを少年保護施設に入れ、怒りの抑制や不安解消のカウンセリングを受けさせるべきたと提案していた。
被害者の家族は、Aに対し最高の量刑が科されたことに満足の意を表している。これに対し、弁護側は、判決を不服として控訴する方針という。
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