2005年08月19日10時29分掲載
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元兵士への雇用・安定プログラムが終了時期へ 東ティモール
【クアラルンプール19日=和田等】インドネシア占領時代に抵抗運動の中核を担った東ティモールのゲリラ組織「東ティモール民族解放軍」(FALINTIL)や抵抗運動の元活動家やその家族に対する支援策として、東ティモールに2年前に導入された平和の定着を目指したプロジェク「RESPECT」が終了の時期を迎えつつある。
国連開発計画(UNDP)が運営を手がけたこのプロジェクトでは、東ティモール全13県に対して、各県10万ドル(1100万円相当)ずつの資金が拠出され、元ゲリラ兵や元活動家などの社会復帰や自立を促すさまざまな小規模プロジェクトが実施されてきた。その資金は日本政府が供与した。地域社会を主導によるインフラ整備事業での雇用創出や職業訓練などが主なプロジェクトの内容だ。
首都ディリでは15件の小規模プロジェクトが実施されたが、このうち9件がインフラ整備プロジェクトで、6件が職業訓練プロジェクトだった。女性グループがこのプロジェクトに参加する事例も目立った。
その代表例がディリの対岸に浮かぶ、かつては流刑地として「監獄島」と呼ばれたアタウロ島でのプロジェクト。女性20人のグループがRESPECTの下で8000ドル(88万円相当)の資金援助を得て、インドネシア軍施設の跡地を国内外の旅行者用のゲストハウス(全7室)に改装した。これにより地域社会に観光に関連した収入をもたらす可能性が開けた。
このほか、同島では島に不可欠な道路(総延長7キロ)の改修を実施、2つのプロジェクトで合計102人の住民の雇用を創出した。
ディリ近郊のアイレウ県でも、コミュニティー・センターの建設など、15件のプロジェクトを実施したが、8月中旬、公式にすべてのプロジェクトの終了を宣言した。同県では、これらプロジェクト実施中に455人分の短期雇用が創出され、さらに248人が職業訓練を受ける機会を得た。
ディリ南西部の山岳部にあるエルメラ県では、橋の建設など24件の小規模プロジェクトが実施されたが、やはり8月中旬に正式にすべてのプロジェクトの終了を宣言した。そのほかの地域でも、ほとんどのプロジェクトが終了を迎えつつある。
1999年の東ティモールの独立決定後、独立運動の中核を担ってきた元ゲリラ兵や抵抗運動の元活動家は、東ティモールを暫定統治した国連の政策の誤りもあり、一時、社会から排除され「行き場」を失った状態に陥った。そのため、かつての「英雄」は社会を揺るがす不安定要因とみなされるようになり、2002年12月に起こったディリ暴動のきっかけをつくったともいわれた。
こうした状況を考慮し、元ゲリラ兵などの社会復帰・自立支援策の一環として03年に導入されたのがRESPECTだ。暫定的な「リリーフ役」として投入された支援策が無事終わりを迎えつつあるところにも、東ティモールの社会が安定を取り戻しつつあることが示されているといえそうだ。
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