2005年08月20日11時54分掲載  無料記事
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移民急増で礼拝施設が不足 米ロス近郊は宗教のモザイク状態

 米カリフォルニア州ロサンゼルス近郊のリバーサイド、サン・ベルドナルド両市で、中東や南アジア、東南アジアからの移民が急激に増加し、それぞれの宗教に関連した礼拝施設の不足が目立っている。両市は、犯罪都市といわれるロスなどより、はるかに治安もよいため、移民の流入が起きている。しかし、急激な移民の増加に前に、礼拝施設の数が追いつかない状態になっている。(ベリタ通信=江口惇) 
 
 米国社会は、これまで世界各国から移民を受け入れてきた。このため様々な文化的背景を持った出身者が混在する「人種のるつぼ」などと形容されてきたが、近年のロスなどからの移民流入により、両市は、「宗教のるつぼ」といった状況を呈している。 
 
 これらの地域には、キリスト教会について言えば、カトリック系、非カトリック系など各派の施設がある。このほかにイスラム教、仏教、ユダヤ教、シーク教、ヒンズー教などの施設があり、全米でも最も宗教の多様化が進んだ地域の一つになっている。 
 
 両郡の人口は、過去10年間で爆発的に増えたという。特に増えたのはヒスパニック(中南米系)やインドなどアジア地域からの移民の増加だ。この状況から、各移民がそれぞれ信じる各宗教ごとに礼拝施設の増設や、新設が必要になっている。 
 
 しかし、カリフォルニア州南部一帯で起きている地価の高騰で、土地代の値上がりが続いており、礼拝施設の建設もままならなくなっている。これに加え、宗教指導者の不足も顕著になっている。 
 
 米紙プレス・エンタープライズによると、既に米国社会に広く生活の根を張っているヒスパニックを別にすれば、近年顕著になっているのは、仏教、ヒンズー、シーク教など寺院の増加という。 
 
 カリフォルニア大学リバーサイド校のジャスティン・マクダニエル准教授は、アジア系の宗教施設は今や、リバーサイド、サン・ベルドナルド両市を越え、近隣のモレノ・バレー、ウイルドマーなどにも広がっていると指摘する。 
 
 こうした地域の寺院は、宗教・文化行事や祭りなどを開く一方、外国語クラス、課外教室などを開き、地域社会との共生を模索している。 
 
 カトリック系が多いヒスパニックでも問題を抱えており、スペイン語が通じる教会の不足が深刻になっている。 
 
 クレアモント大学の副学部長パトリック・ホーン氏は、イスラム、仏教、東方正教会などが宗教行事などに近隣の人々を招き、地域社会の理解を得ようとしているので、地域社会は、異なる宗教に対して恐怖感は覚えていない、と強調する。 
 
 事実、地域全体で見ると、キリスト教施設が3分の2を占める。このため宗教的な摩擦が起きる状況には至っていない。しかし、2001年の9・11同時多発テロ以降、異文化や異なる宗教に対して、偏狭な考えを公言する関係者も目立っており、今後宗教的な摩擦が起きないとの保障はない。 
 
 スリランカの仏教寺院の関係者は「仏教は平安と安全な生活を求めている。われわれは、家族中心の考えである」と、地域社会に配慮する発言をしている。 


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