2005年08月24日14時24分掲載
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大物キャスターの死で肺がんに関心集まる 禁煙者も急増の気配
【ロサンゼルス・ベリタ通信=戸田邦信】米大手放送局ABCテレビの看板キャスター、ピーター・ジェニングス氏(67)が8日に肺がんで死亡したが、それをきっかけに肺がんについて一般の人々の関心が高まっている。全米がん協会や米国肺協会には、禁煙について一般からの照会が急増し、肺がんに対するメディアの取材も活発になっている。米国では、肺がんは成人の死因の上位を占めるが、これまでその撲滅をめぐっては活発に論議されることが少なかったという。
ジェンニグス氏はことし4月、自らがアンカーを務める夜の報道番組「ワールド・ニュース・ツナイト」で、肺がんであることを告白、今後化学療法を受けることを明らかにした。同氏は、20年前にたばこを断ったが、意志が弱く、01年の9・11同時多発テロ事件の後、たばこを吸い始めたと語った。
肺がんの原因は喫煙といわれてる。同氏の告白は、録画したものだったが、トレードマークの滑らかな声は、かなりしわがれ声になっていた。健康が回復すれば現場に復帰するとも述べたが、これが最後の出演となった。
ジェニングス氏が死亡したのをきっかけに、ニューヨークにある非営利団体「米国肺協会」が提供しているオンライン「禁煙フォーラム」へのアクセスが急増している。また禁煙に関するホットラインを開設している全米がん協会への照会数は、記録的な数字になっているという。
この間、ジェニングス氏が死去した翌日の8日には、かつての米TVドラマ「ダラス」に出演した女優バーバラ・ベル・ゲデスさん(82)が、肺がんで死亡した。ベル・ゲデスさんは長年の喫煙歴があった。
また9日には、米映画「スーパーマン」の主役を務め、昨年10月死亡した俳優クリストファー・リーブ氏の妻で女優ダナさん(44)が、肺がんの治療を受けていること告白した。クリストファー・リーブ氏は、1995年に落馬事故で脊髄を損傷し、車椅子の生活を余儀なくされた。生前、ブッシュ米大統領に対し、万能細胞といわれるES細胞の研究実現を強く働き掛けていた。
妻ダナさんは、たばこは吸わないという。レッドノバ(電子版)は、喫煙者の煙を吸ったり、アスベストなどの有害物質に晒された場合、非喫煙者でも肺がんになる可能性があると指摘している。
このように有名人が相次いで肺がんに襲われたことも手伝って、メディアの肺がんへの関心が一段と高まっている。
米紙ロサンゼルス・タイムズなどによると、肺がんは米国の成人男女の主要な死因になっており、04年には、16万3510人が死亡している。末期症状のケースが多く、生存率が低いのが特徴だ。しかし、死者数が多いにも関わらず、治療研究費への政府の支出は乳がんなどに比べ、少ないという。
肺がんにあまり関心が向けられなかったのはなぜか。米ウイスコンシン大学のジョアン・シラー博士(腫瘍学)は、米PBSの番組の中で、その理由として(1)肺がん患者の生存率が低く、がん克服者による治療研究底上げへの働き掛けが弱い(2)肺がんは、たばこの喫煙と関係しているとされるため、自業自得との風潮がある──などを挙げている。
米紙サンディエゴ・ユニオン・トリビューンは社説で「肺がんへの研究費は明らかに少ない」と述べ、治療方法の向上のためにもっと連邦予算を配分すべきだと主張している。
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