2005年08月29日15時31分掲載  無料記事
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健康管理にハイテク技術活用 インテル社も開発に本腰

 米国には1946年から1964年に生まれた「ベビー・ブーマー」と呼ばれる世代が、7700万人いる。この多くが定年を迎える頃には、病気になっても十分な治療スタッフや看護人員が足りないともいわれる。こうした不足分を、現代のハイテク技術でカバーしようと、メーカーや大学の研究施設などで、高齢者向け健康機器の開発が進んでいる。(ベリタ通信=有馬洋行) 
 
 米紙サンフランシスコ・クロニクルによると、薬をのむ時間を知らせる「話す薬びん」、徘徊するアルツハーマー病の患者の位置を知らせる「腕時計」、体温や脈拍を計測する「スマート救急絆」、それにいびきなど感知するセンサー付きシートカバーなどの開発が進んでいると指摘。このほか、身体障害者が歩いたり、立ったりするのを助けるロボット開発も行なわれている。 
 
 ごく一部が実用化されているが、早ければ来年にも、その多くが米国市場にお目見えすると予想されている。 
 
 世界的半導体メーカー「インテル」(米カリフォルニア州)はことし1月の業務編成で、社内にデジタル健康グループを設置、高齢者向けビジネスを今後の主要なターゲットの一つと位置づけた。 
 
 インテル社の開発担当者、エリック・ディッシュマン氏によると、同社は、米国のほか、南米、欧州諸国に社会学者を派遣し、高齢化時代を迎えている中で、各世帯が、どのようなハイテク開発を求めているかを調査した。 
 
 その結果、40歳以上の人々から、自らの健康管理や高齢者の親の介護に関する不安の声が多数寄せられた。こうした一般からの生の情報を基に、パソコンなどに組み込まれる半導体の技術を、健康機器の開発に応用していく姿勢を打ち出した。 
 
 インテルの研究所では、物忘れがひどくなった人のために、自宅などに電話がかかってきたときに、相手が誰かを識別する技術を開発した。電話が鳴ると、スクリーンに相手の声紋や、名前、関係などが掲示されるという。 
 
 また携帯電話を使って、声の震えでパーキンソン病の危険性を探知したり、糖尿病をモニターする機能も開発されている。 
 
 米ナイトリッダー新聞によると、登山や自動車などに使われているナビゲーション装置が、アルツハイマー病患者のために活用される時代になりつつあると報じている。 
 
 ニューヨークにあるコロンビア大学のスティーブン・フェイナー教授(コンピューター学)は、GPSの受信機能を持ったゴーグルの開発に取り組んでいる。原型は今のところ、仮面ライダーのような眼鏡をかけ、背中に受信アンテナを背負って動く、いかついものだ。しかし、実用化されれば、ゴーグルをつけた人がどこにいるかを特定でき、また何を見ているかも識別できる。 
 
 ハイテク健康機器は、今後に予想される高齢者の増加で、医療の現場や家庭看護を補完する役目を果たすと期待されている。現在、企業、大学、政府系機関などの間で技術開発が進んでいる。 
 
 しかし、健康機器の開発によるマイナスの面も懸念されている。プライバシーの問題や、機器に依存することにより、患者が、人と接触する時間が少なくなり、孤独に陥ったり、うつ状態になる可能性もあるからだ。 


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