2005年08月29日15時34分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200508291534291

「悪魔」のような夫と暮らした17年間 ある妻の決断

 女性が夫からの暴力に立ち向かうのは容易ではない。子どもがいる場合は、特に家を出る決断を下すのは簡単ではない。ニューヨーク市ブルックリン郊外に住むキャサリン・ハワズさん(36)は、子ども3人を連れて昨年秋、遂に家出を決行、夫を別れる決意をした。17年間にわたり「悪魔」のように見えた夫と暮らしてきたのは、子どものためだった。子どもたちは全員、キャサリンさんの味方につき、父親の元に戻らない考えという。(ベリタ通信=エレナ吉村) 
 
 キャサリンさんは、暴力を振るう夫に敢然と立ち向かい、自立の道を歩もうとしている努力が認められ、家庭内暴力を受けた女性を支援する団体「セーフ・ホライゾン」(本部ニューヨーク)の会合で今春、表彰を受けた。 
 
 米誌レッドブックによると、会合には、大リーグのニューヨーク・ヤンキースのジョー・トーリ監督夫妻も出席。監督夫妻も、独自に家庭内暴力対策に取り組んでいる功績が認められ、キャサリンさんとともに表彰された。 
 
 米国では、3人の1人の女性が、一生の間で、夫やボーイフレンドから肉体的虐待を受けるという。キャサリンさんは19歳の時、エジプト出身のコック、イサムさんと知り合い、半年後に結婚した。妻は家庭におさまり、子どもを育てるものという夫の保守的な考え方には、特に反対はしなかった。 
 
 しかし、1年足らずで夫は豹変。キャサリンさんの女友達が、たばこを吸い、ぴっちりしたジーンズをはいているとの理由で交際を禁じられた。キャサリンさんは、両親にも自由に会えなくなった。 
 
 末の二男が4歳の時、キャサリンさんのひざの上に座っていると、二男を女々しいことをするなとたたいたという。長女サラさんが15歳の時には、長女に母親と話すことさえ禁じた。「悪魔と結婚したと思った」とキャサリンさん。 
 
 子どもたちと家を出ることを何度も話し合った。子どもたちが成長するにつれ、母親の立場を理解するようになった。家を出る時期が迫ってきた。2003年に、キャサリンさんは、家を出る準備を始める。当時、体重が113キロあたっため、1年半にわたり減量に努め、45キロ減らした。家を出てからの生活の準備のため、不動産関係の資格もとった。 
 
 昨年、夫が暴力を振るい、警察に逮捕された。これをきっかけに子どもたちと家を出た。その後、夫は、子どもたちを取り戻すために、親族を使い、一度は、二男を車に連れ込み、誘拐しようとしたこともあった。 
 
 目下、家庭裁判所で子どもの親権をめぐって争っている。「夫は17年間にわたり、私のことを役立たずと言った。彼の言っていることが間違っていることを証明する」とキャサリンさん。正式に離婚が成立すれば、看護婦の勉強をして自立の道を歩むつもりだ。 
 
 子どもたちの心も、父親からすっかり離れている。長女サラさんは、お化粧をすることも許されなかった。父親との生活は息が詰まるものだった。裁判所の決定で、父親には、定期的に子どもに会う権利が与えられているが、サラさんは、父親に一度会った後、父親の再度の訪問を拒否した。 
 
 「自分のしたいことだけをしたい。その中には、父親に会うことは含まれていない」と、サラさんは話している。 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。