2005年08月29日22時00分掲載
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不法移民は「テント」に収容を 米保守派の過激発言続く
対テロ戦争の真っ只中の米国で、06年の米議会中間選挙で主要な争点の一つになりそうなのが、不法移民問題。現在、米国には1200万人の不法移民がいるとされる。不法移民を追い出せとの風潮に乗って、保守系政治家や共和党寄りメディアは、不法移民への厳しい取り締まりを支持している。最近も、共和党の実力者で下院院内総務のトム・ディレイ下院議員(テキサス州選出)が、移民に対して差別的な発言をするなど、その強硬姿勢が目立っている。(ベリタ通信=有馬洋行)
不法移民に対して厳しい姿勢をとっているFOXニュースの人気キャスター、ビル・オーライリー氏は、最近公表された調査機関ピュー・ヒスパニック・センターの報告を取り上げ、メキシコ人成人の4割が、米国に機会があれば、米国に来ることを考えていると、警鐘を鳴らした。
メキシコの総人口は約1億380万人。さらにピュー・ヒスパニック・センターの調査では、メキシコ人成人の2割が不法入国の手段を使っても米国に行きたいと考えていることを明らかにした。オーライリー氏は、このままでは、米国はメキシコ人に“占拠”されるとし、厳重な国境監視などを力説した。
米国にいる不法移民の6割近くは、メキシコ系といわれる。米国とは陸続きという地理的な条件から、毎年50万人がメキシコ国境から不法入国してくる。国境の下を掘った地下のトンネルから侵入したり、車の荷台に詰まれたカーペットの巻物の中にくるまったりして、とにかく入国してくる。
不法入国が絶えないのは、経済格差であることはわかっている。世界一ともいえる富裕国米国と隣り合せのメキシコは、高失業率、汚職、麻薬などに悩み、経済も治安も安定していない。
ブッシュ大統領は中間選挙を意識して、年末にかけて何らかの移民政策を打ち出すと予想されている。米紙ヒューストン・クロニクルによると、大統領を支えるディレイ下院議員は8月初め、テキサス州の党の会合で、地元警察を使って不法移民を見つけ出させるべきだと発言。また連邦職員の任務は、拘束された不法移民のためにテントでもいいから、収容場所を確保することだと述べた。
▽不法移民には「教育受ける資格なし」
さらに不法移民は米国で教育を受ける資格はないとし、また米国で生まれた子に対し、自動的に市民権を付与する現在の仕組みに反対の立場を表明した。
地元警察は、犯罪捜査などが主要任務で、移民問題は、本来は入管当局の仕事。不法移民取り締まりに警官を使えというのは、保守派の最近の意見に沿ったものだが、ヒスパニック(中南米系)の人々の支援団体からは「人種差別発言。容認できない」との反発の声が上がっている。同団体は、警察には、街中で理由もなく移民に対し尋問する権利はないと述べている。
一方、メキシコを国境を接する米ニューメキシコ、アリゾナ両州はこのほど、移民急増の対処するため、一部の地域に緊急事態を発令した。両州とも民主党の知事だが、選挙が近いため、移民問題に厳しい姿勢をみせることで、保守票の獲得を狙ったとの見方もある。
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