2005年09月07日03時32分掲載
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9・11総選挙を斬る!
小泉陣営、天木氏にあてつけの「刺客」 外交儀礼無視、中東4大使が出陣式に出席
【東京7日=ベリタ通信】9月11日投票の衆議院選挙で、小泉純一郎首相と同じ神奈川11区から出馬した元駐レバノン大使で、イラク戦争に反対する意見を外務省に具申したことをきかっけに外務省を追われた天木直人氏(58)に対し、小泉陣営が天木氏へのあてつけとも思われる露骨な「刺客」を陣営に迎えていたことが分かった。
刺客とは駐日レバノン大使をはじめとするエジプト、パレスチナ、ヨルダンの中東4カ国の駐日大使で、30日の小泉陣営の出陣式に4大使が「応援」に駆けつけたのだ。
自らの職を賭して、イラク戦争に断固反対した天木氏はレバノンのメディアでは、たびたび取り上げられ、その「サムライ」的な信念の行動を高く評価する声が同国政府首脳や中東各国外交官の中に今もある。
4大使の出陣式出席は、内政に干渉しないことを是とした外交上も異例で、関係者の間では「小泉陣営が天木氏へのあてつけに、4大使に『踏み絵』を踏ませるために呼び付けたのではないか」との憶測も読んでいる。
4大使が自主的に出陣式にかけつけたのか、小泉陣営からの要請を受けて出席したのかは明らかになっていない。
関係大使館筋は「4大使は当日、横須賀市長を表敬訪問した」と明らかにしており、その後に小泉事務所に立ち寄ったもようだ。
現在の公選法では、外国人が選挙資金を提供することは禁じているが、選挙運動に参加すること自体は禁じてはいない。しかし、憲法調査推進議員連盟が作成した「憲法改正国民投票法案」では、「外国人の国民投票運動の禁止等」を定め、寄付だけでなく、外国人が国民投票への賛否を呼び掛ける運動自体を禁止している。
外国人、それも外国政府の公人を使った選挙運動には問題点が多々あり、今回のケースは、小泉陣営側が4大使を招いたとすれば「首相の地位利用」であり、「信義則違反」ともいえるものだ。
外国の国政選挙で、日本大使が特定の候補者の事務所に応援に駆けつけることなどは外交儀礼上タブーとされており、今回の4大使出陣式出席は、小泉陣営が外交の世界の常識を踏み破ったともいえる。
天木直人氏は4大使の出陣式出席について「私を支持してくれる外国の首脳もいるし、応援に呼ぶことは不可能ではない。しかし、外国の公人を選挙運動に招くという発想は公選法の趣旨からも逸脱しているのではないか」と批判。「たとえば私が中国の外相を招き、小泉批判の応援演説をしてもらうような選挙をやっていいのか」と問題を投げかけている。
天木氏は駐レバノン大使をしていた2003年、イラク戦争に反対する意見を外務省に具申をした後、外務省を退職に追い込まれた。その後、著書などで外務省のスキャンダルなどを内部告発してきたほか、イラクへの自衛隊派遣に反対し、米主導のイラク戦争を支持する小泉政権を一貫して批判し続けてきた。
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