2005年09月12日15時16分掲載  無料記事
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カトリーナ大災害

白人でなければ生き残れない? 読者欄で痛烈な皮肉の声

 「ブッシュは黒人のことを気にかけていない」と、米国の人気ヒップ・ホップ歌手カニエ・ウェストさんの発言も飛び出すなど、大型ハリケーン「カトリーナ」をめぐるブッシュ大統領の指導力に不満の声が高まっている。新聞の読者欄には「州兵が必要とされるときに、彼らはどこにいたのか。答えはイラクだ」と言った発言も載る始末。政権2期目のブッシュ大統領は、復興支援などを通じて汚名を返上する考えだが、支持率も下がっており、当面は厳しい運営を強いられそうだ。(ベリタ通信=有馬洋行) 
 
 米紙サンディエゴ・ユニオン・トリビューンの読者欄に、痛烈な風刺の効いた幾つかの投書が掲載された。「米国人のための災害サバイバル・キット」と見出しをつけた短い文は、災害から生き残るための条件として「黒人でもなく、貧乏でもなく、しかし白人であること」と述べた。ハリケーンに直撃され、市内の8割が冠水した米南部ルイジアナ州ニューオリンズでは、人口の7割近くを黒人が占めているため、被災者は黒人に集中した。多くの黒人は貧困層に属しており、投書はこれを皮肉ったものだ。 
 
 また「ブッシュ政権の優先順位のつけ方は興味深い。イラクへの冒険のためには、資金を浪費しながら、ニューオリンズの自国民のためには、寄付を募っている。この構図はなにか変じゃないか」という投書も。 
 
 これに対し、「ブッシュ叩きはたくさんだ。今回の災害は、備えができるものではなかった。州兵の出動が遅れたのは、準備に時間がかかったためだ」との声もあった。 
 
▽州兵はイラクに 
 
 ブッシュ大統領は自ら支援活動に遅れがあったことを認めている。「カトリーナ」は8月29日に米南部を襲ったが、通常自然災害に出動する州兵の出動も遅かった。ルイジアナ州兵の多くがイラク戦線に送られ、人員が不足していたとの指摘もある。 
 
 ブッシュ大統領はハリケーンが襲来した時期は夏休み中だった。「カトリーナ」襲来の翌日、大統領は被災地ではなく、カリフォルニア州サンディエゴの海軍基地に向かい演説。内容は対イラク戦争への支持を呼び掛けるものだった。 
 
 これについて世論調査機関ゾグビー社の関係者は「大きなミスだった。ミシシッピーやルイジアナ州の人々の苦しみより、イラク戦争の方が気にかかっていると思わせてしまった」と指摘する。 
 
 クリントン前大統領は、自然災害では速やかな対応をとったとして知られるだけに、ブッシュ大統領の反応の悪さが露呈してしまった。このため目下、低下したイメージの修復に懸命だ。 
 
 ハリケーンの被災地に復旧は時間がかかると予想され、冠水による衛生面での危険性も指摘されている。こうした中、歌手カニエ・ウェストさんは今月2日、ニューヨークでの被災者支援の慈善コンサートの会場で、ブッシュ批判を展開、NBCで生中継されるハプニングが起きた。黒人指導者やアーティストの間で募っている不満が噴き出した結果といえる。 
 
 一方、ワシントン・タイムズ紙(電子版)によると、ハリケーン被害でブッシュ政権はこれまでに、世界40カ国から申し込みのあった支援活動や寄付金の受け入れを決めた。しかし、キューバからあった1100人の医師派遣などの申し出については、医療スタッフは不足していないとして、見送られる公算が大きい。 


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