2005年09月13日17時56分掲載
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カトリーナ大災害
自然災害にもろい米国に驚く 世界のメディアの反響
米南部を襲った大型ハリケーン「カトリーナ」の被害について世界各地のメディアは、世界最強の国である米国が、かねてから指摘されていた堤防決壊の危険性を見過ごし、予想外の災害を蒙ったことに驚きを隠せないでいる。米国は、その生活水準の高さから、多くの国から羨望のまなざしで見られてきた。しかし、市街地が泥水に沈み、まるで防災体制が整っていない第三世界の国のように無残な姿をさらけ出した。史上最強国家が、なぜこうも自然災害にもろかったのかと疑問を呈している。(ベリタ通信=エレナ吉村)
米コックス・ニュースなどによると、韓国のコリア・ヘラルド紙は社説で、「世界中の国の人がうらやむ米国で、数千人が犠牲になり、遺体が浸水した街路上に浮遊するということは、まったく信じられないことだ」と書いた。
アフリカ・ジンバブエのヘラルド紙には、無署名のオピニオン記事が掲載され、「カトリーナによって、米国にいる黒人が奴隷同然であることが判明した」と皮肉った。
フランスの左翼系リベラシオン紙は、「カトリーナは、多くの米国民が直視しようとしない、(社会的)病巣を明らかにした」と述べ、黒人による公民権運動(自由・平等を求めた運動)の闘いから40年を経たのちも、人種差別が依然として米国社会に残っていると指摘した。
被害の大きかったルイジアナ州ニューオリンズでは、被災者の多くが黒人とされ、なおかつ低所得の貧困層が多いとされている。ブッシュ政権による被災者救援の対応の遅れは、白人ではなく黒人だったためとする意見もある。
ニューオリンズと同様、低地に位置するオランダのNRCハンデルスブラット紙は、被災者が空腹や、のどの渇きを訴えている光景をとらえ、「第三世界で予期される光景だが、実は唯一の超大国である米国のものであった」と述べた。
▽ブッシュ大統領は現実を見ていない
メキシコの元駐米大使ホルヘ・モンタノ氏は、地元紙へ寄稿し、被害発生から2日後に、ようやく夏休み休暇を切り上げ、ホワイトハウスに戻る途中に、上空からだけ視察したブッシュ大統領の対応の甘さを指摘した。
ブッシュ氏は当日、大統領専用機から降りたった際、リラックスした表情で愛犬を抱えていたが、モンタノ氏は、こうした振る舞いも、現実を見ていない証拠だと語った。
総選挙の投票を控えているドイツでは、与党・社会民主党(SPD)のシュレーダー首相率いる連立政権のユンゲル・トリッティン環境相(緑の党)が、ブッシュ大統領が環境問題で後退する姿勢を取ったことを、ハリケーン被害に絡めて批判した。
トリッティン発言は、不穏当として欧州のメディアから反発を受けたが、実際のところ、ハリケーンの被害を米国の環境対策や、外交政策に絡めて分析する新聞論調が目立っている。
具体的には、米国が地球温暖化に非協力的な態度を取っていること、また対イラク戦争遂行のため洪水対策費を削ったこと、また自然災害の際に出動する州兵が、イラクに派遣され人員不足が生じていた、などを指摘している。
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