2005年09月17日09時57分掲載  無料記事
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海面上昇懸念するオランダ 米ハリケーンの教訓で堤防再点検へ

 海抜0メートル以下の国土が半分を占めるというオランダ。同国を流れるライン、マース川は北海に流れ込んでいるが、海面の上昇が続いており、洪水対策は国家存亡のカギを握る。8月末に米南部を襲った大型ハリケーン「カトリーナ」で、ルイジアナ州ニューオリンズなどで堤防が決壊し、市街地が水没したのは、オランダにとっても教訓になった。河川の氾濫に備え、急遽堤防の再点検を強化することになった。(ベリタ通信=エレナ吉村) 
 
 米コックス・ニュースによると、オランダは干拓地が多く、国中に水路が張り巡らされている。海面は今世紀末までに1メートル上昇すると予想されている。陸地もわずかずつ沈下しており、この結果、豪雨などに見舞われれば、以前より頻繁に浸水が起きる危険性が指摘されている。 
 
 オランダは、今回のニューオリンズのように堤防決壊で、多大な被害を出した経験をしている。米ワシントン・ポストによると、1953年2月、高波を伴った嵐に直撃され、450以上の堤防が決壊し、約1900人が死亡する惨事になった。多くの人が就寝中の出来事で、街中を襲った冬の冷たい水が、4万7000以上の家屋・ビルを押し流した。 
 
 オランダ政府はこの“1953年の悲劇”を教訓に災害予防対策を実施。堤防の強化を行なう一方、8億ドルの巨費をかけて、河口口に「マエスラント堰」と命名された防潮堰を1997年に完成させた。同政府は、4000年に一度発生るような大型の風水害を想定し、防災体制をとり、予算措置を講じているという。 
 
 1953年に水害が起きた当時は、第二次大戦の終了直後だった。このため国防や復興費に予算が取られ、堤防の強化などの予算は削られていた。今回、浸水したニューオリンズでも、長年にわたって地域社会から堤防の強化を求める要望が、連邦政府に行なわれていたが、対テロ戦争などで災害対策費が大幅に削られていた。 
 
 半世紀前にも、起きた場所は異なるものの、政府が災害の備えを怠ったため、市民が被災するという、同じようなパターンが起きていたことになる。 
 
 オランダでは、大半が海面より低いため、洪水を身近な脅威と認識する人が多い。特に海面の上昇に警戒感を強めている。仮に堤防や砂丘などで、オランダが守られていないと想定した場合、国土の66%が水没するともいわれている。 
 
 欧州諸国では、地球温暖化の影響で、今後一段と水害が大きな脅威になると懸念している。米国では、今回の「カトリーナ」の直撃を、地球温暖化と絡めて論じすることは少ないが、オランダの生態学者のマルセル・マルチャン氏は、「気候の変動が関係しているのは疑いがない」と指摘する。 
 
 気候変動が続いているだけに、洪水を防ぐには、沿岸部の堤防を強化する以外に方法はない。オランダは国民所得も高く、防災施設の充実を図れる。しかし、開発途上国のバングラデシュなどでは、資金が確保できず、防災施設の強化はおぼつかない。このまま気候変動が続けば、大きな水害を防ぐ手立てのないまま、開発途上国が被害をうけると懸念されている。 


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