2005年09月18日15時41分掲載  無料記事
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交換留学生を性的虐待から守れ 米国務省が対策に乗り出す

 高校生たちが異文化に触れながら英語を学べる交換留学は、長い実績と伝統を誇っている。米国でも、各国から訪れた交換留学生が、受け入れ先であるホストファミリーに滞在しながら、学校に通っている。ところが、10代のこうした若者たちがホストファミリー先で、性的虐待を受けるケースが近年目立ち、米国務省が対策に乗り出している。(ベリタ通信=江口惇) 
 
 米国には、過去10年間で25万人以上の交換留学生が訪れている。米紙プレス・エンタープライズによると、この間交換留学生が、性的虐待に巻き込まれたケースは5件しかなかった。ところが、この数字が、性的虐待事件の実態を反映していない可能性が大きくなった。近年、メディアの報道などを通じて、相次いで悪質な性的虐待事件が明るみに出ているからだ。 
 
 判明しただけでも、性的虐待事件は、少なくとも過去3年間で7件発生している。米カリフォルニア州ムリエタ市で2003年、ホストファミリーを勤めていた35歳の男性教師が、交換留学生の15歳のドイツ人女子高校生を性的に虐待した。同教師は04年、禁固3年の判決を受けた。 
 
 また米東部メリーランド州では04年に、ホストファミリーの生物学の高校教師が、17歳のドイツ人女子高校生の寝室に入り込み、性関係を強要した。このほか、交換留学生の面倒を見るコーディネーターが、ヨーロッパ出身の3人の男子生徒を暴行した事件も起きている。 
 
▽ホストファミリーの犯歴チェックも 
 
 こうした事態を重視した米国務省は、これまでの甘い管理を軌道修正。ホストファミリーや交流団体などに対し、性的虐待事件が判明した場合は、米国務省や警察に速やかに報告することを義務付ける新しいルール作りを急いでいる。またこれに併せ、ホストファミリーになった夫婦らの犯罪歴も事前にチェックされることになる。 
 
 米国務省では10月11日までに各方面からの意見を集約、来年1月から新しい規則を適用する考えだ。 
 
 交換留学生を受け入れるホストファミリーになるのは、ボランティアの人たちだ。このためあまり厳しい基準を設けると、ホストファミリーになる家庭を探すのが困難になるとの声も上がっている。 
 
 またホストファミリーの犯罪歴チェックに関しては、カリフォルニア、メリーランド両州で起きた性的虐待事件の二人の教師は、いずれも過去に犯罪歴はなかった。犯罪歴がない者が、性的虐待を犯す場合があるため、必ずしも完全に性犯罪を食い止めるのは、なかなか容易ではないようだ。 
 
 一方、交換留学生は全米に広がっているが、彼らは、受け入れ先のホストファミリーの関係から、性的虐待をなどを受けても無力感に陥り、当局に報告するのを敬遠する傾向があるとも指摘されている。カリフォルニア州オーシャンサイドにある「交換留学生の安全のための委員会」の代表ダニエル・グリハルバさんは「この問題は極めて醜悪。若者が(このような問題を抱えて)帰国するのは、恐ろしいことだ」と話している。 
 
 米国務省は、将来的に、交流団体などが性的虐待の報告を怠るような事例が起きた場合、その若者が参加していた交換留学プログラムが停止になることもあると警告している。 


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