2005年09月20日15時21分掲載  無料記事
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「神の下」に国旗忠誠強いるのは違憲

 【ロサンゼルス19日=藤原彩子】米カリフォルニア州サクラメントの連邦地裁は14日、公立校で生徒が毎朝斉唱する「米国旗への忠誠の誓い」の一部分に含まれる「神の下にひとつの国」という文言は政教分離を定めた修正憲法第1条に反し、違憲であるとの判決を下した。 
 
 訴えを起こしていたのはカリフォルニア州の公立小学校に通う娘を持つ、弁護士兼医師のマイケル・ニュードーさん。 
 
 ニュードーさん、「神の下」の文言は子供の、神の存在を強制的に確認させられることから自由であることの権利を侵している、と訴えた。 
 
 ニュードーさんは以前にも裁判を起こし、サンフランシスコ連邦控訴裁から違憲判決を勝ち取っていた。しかし、娘の親権が母親側にあったことから、娘の代わりに訴える権利がないとして昨年、最高裁は訴えを却下した。 
 
 このためニュードーさんは、他の3家族の親の代理人として再度、訴えを起こしていた。 
 
 もともとこの宣誓には神に関係する文言は入っていなかった。1954年、冷戦下にあった米国では共産主義者を「無神論者」と呼ぶ傾向があり、無神論者たちに対抗する意味を込めて、連邦議会が国旗忠誠の宣誓に神の文言を後から付けた。 
 
 連邦地裁のカールトン判事によると、今回の判決によって訴えを起こした3家族の子供たちか通う、サクラメントの地区の3つの学校に関して神の下の文言を入れた宣誓への差し止め命令書にサインをするという。 
 
 この訴えが控訴裁で認められれば、西部の9つの州で、最高裁で認められれば、米国全土の州でこの差し止め命令の効力が及ぶことになる。 
 
 今回の判決に対しては大学教授、政治家、有識者、宗教団体等各方面からの論争が繰り広げられることになりそうだ。 
 
 「一部の人にとってこの宣誓は米国が神に選ばれた国、神が選んだ国であるとの声明を意味する。しかし、その一部の人以外の人たちにとっては彼らの神への考え方に影響してしまう」とウィラミット大学のエリス政治学教授は語る。 
 
 ブッシュ大統領の共和党の支持者は熱心なキリスト教信者・福音派、保守派の人々が多い。今回の判決に対しても多くの保守派の人々の反対意見が活発なようだ。ゴンザレス司法長官もすでに「今回の判決を覆すために戦う」としている。 
 
注:米国旗への忠誠の誓い 
 
 「私はアメリカ合衆国の国旗に忠誠を誓う。 そして神の下で、分けることができず、正義と自由をもたらす一つの国、共和国への忠誠を誓う。」 
 
 カリフォルニア州ではこの「国旗への忠誠の誓い」が毎朝公立学校で斉唱されなければならないと、州法によって定められている。 


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