2005年09月20日20時31分掲載
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カトリーナ大災害
米ハリケーン被災者の肉親探しでネットが威力発揮
大型ハリケーン「カトリーナ」に被災した人々の間で、インターネットの力が改めて再認識されている。消息がわからなくなった家族同士の連絡のほか、自分の居場所を知らせる、ネットの「掲示板」の活用など、計り知れない威力を発揮している。自ら被災者である人たちが、ネット上で“市民ジャーナリスト”として、生情報を提供することも目立っている。(ベリタ通信=有馬洋行)
8月末にハリケーンの直撃を受けた米南部ルイジアナ、ミシシッピ州では、電話、電気などがストップするところが続出し、避難生活を余儀なくされた。身元を証明する書類を持ち出す余裕もなく、逃げ出した人も多い。
こうした被災者にとって強い味方になったのが、インターネットだ。浸水したルイジアナ州ニューオリンズの被災者が移送されたテキサス州ヒューストンの競技場「アストロドーム」では、臨時のコンピューター・ルームが設置された。
米紙ロサンゼルス・タイムズによると、同ルームには、家族の消息や、臨時に住む家を検索しようとする人などが詰めかけている。被災者の中には、コンピューターを初めて触る人もいる。
ハリケーン襲来後、大手テレビ局はウェブサイトに力を入れ、その結果、被災者や一般利用者からのアクセスも急増している。
MSNBCのサイトは、連絡がつかない家族や友人の消息を探すページと、自分がどこにいるかを知らせるページの両方を提供。いずれも名前、住所、コメントを書き込む欄があり、この情報はその後ネットの掲示板に掲載されている。
9日までの集計では、MSNBCのサイトには、17万人がこの二つのページを利用し、700万人が掲示板にアクセスしてきている。さらに記者たちのブログ(電子日記)には、4000以上の書き込みがあった。多くが被災者への支援を申し込むものだったという。
また他のオンライン掲示板の中には、自宅を失い、行き場を失った被災者のために住居を開放する人をリスティングするサービスを行なっているものもある。
このほか、大手テレビ局のサイトでは、市民から送られてきた情報を掲載するスペースも用意し、“市民ジャーナリスト”から多くの情報や写真が寄せられている。CNNの関係者は「従来のジャーナリズムは、(記者が)外からみた情報を提供するものだったが、市民ジャーナリズムは、内からみた情報を提供するものだ。双方からの情報によって、ストーリーが完璧なものになる」とコメントしている。
▽地元紙はネットのみで記事配信
ニューオリンズの地元紙タイムズ・ピカユーンも、ハリケーンで新聞の印刷を停止し、3日間にわたりウエブサイトで記事の送信を続けた。この間、数十万のアクセスがあったという。
またアメリカ赤十字への寄付金5億300万ドルのうち半分が、オンラインで行なわれるなど、デジタル時代を象徴する出来事が相次いでいる。
ハリケーン被害により、斜陽といわれた新聞の売れ行きも急増、またテレビ局の視聴率も上昇しているが、インターネットが従来のメディアと違うのは、双方向である点だ。情報化時代の中で、今後もウェブサイトが、市民の情報交換や連絡の場として、一段と重要な役割を果たしていきそうだ。
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