2005年09月21日04時17分掲載
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検証・メディア
【資料】「NHK受信料支払い停止運動の会」の見解と申し入れ全文
「NHK受信料支払い停止運動の会」が20日に橋本元一NHK会長に送った見解と申し入れの全文は以下の通り。
2005年9月20日
NHK会長
橋本元一 様
「NHK新生プラン」に関する私たちの見解と申し入れ
本日、NHKは、「新生プラン」を発表しました。そのなかでNHKは、広告収入や税金に頼らず、視聴者が負担する受信料で支えられているからこそ、視聴率や特定の主義主張に偏らず、自主自律の放送を行うことができると述べています。しかし、その一方で、NHKは受信料不払い者や未契約者に対しては、民事手続きによる受信料の督促を行うことも辞さないとしています。
その場合、仮に、裁判所をつうじて支払い督促状が送付されれば、不払い者は2週間以内に異議申し立てをしないと、裁判で判決が確定したのと同じ効果が生じ、いつでも強制執行ができる状態になります。
こうしたNHKの方針は、「NHKと国民との信頼に基づいて受信料をいただいているという全く世界に例のない理想的な公共放送」(第145回国会衆議院逓信委員会における海老沢NHK会長〔当時〕の答弁)と自負してきた受信料制度の趣旨を根本的に覆すことを意味します。
また、こうしたNHKの方針は、私たちの会が取り組んでいる「受信料支払い停止運動」の根幹に関わる問題でもあります。そこで、当会は呼びかけ人で協議をし、以下のような見解をまとめ、貴職ならびに全理事、さらに石原経営委員会委員長ならびに全委員に提出いたします。
この見解の趣旨を十分にお汲み取りいただき、前記方針を再考のうえ、撤回されるよう、強く要望します。
万一、NHKが当会をはじめとする多くの視聴者、メディア専門家の異論に耳を傾けず、法的措置を強行された場合、当会は法的手段も含め、貴局の暴挙に対抗する意思を持っていることを通告いたします。
1. 新聞報道によれば、NHK橋本会長は「不払いをいかに止めるかが、信頼回復につながる。その方法として(法的措置を)導入することを考えている」(『読売新聞ニュース』9月8日21時28分更新)と述べていますが、これは受信料不払い問題の原因を直視しない議論です。
下記は、NHKが本年8月に公表した受信料支払い拒否・保留の理由の推移です。
| 今年2月〜3月 | 今年5月〜7月 |
不祥事・経営陣への批判 | 35% | 34% |
不公平感・制度批判など | 19% | 33% |
改革の様子見 | 27% | 22% |
隠蔽体質・退職金・ETV問題など | 19% | 11% |
不払いの理由をこの資料のように分類することについては議論の余地がありますが、それを留保したうえでいえば、「不公平感・制度批判など」は増加したとはいえ、33%であり、それ以外の広い意味での経営批判が45%を占めています。また、「改革の様子見」という理由も単純な不公平感ではなく、NHKの経営姿勢や現在の制度に対する疑問・批判が背景にあると考えられます。このような資料からすれば、NHKが最近、強調する「お隣が払っていないから」という、不払いが不払いを呼ぶ現象は全体の3分の1程度にすぎないことになります。
となれば、「不払いをいかに止めるかが信頼回復につながる」のではなく、「不信の原因を取り除く改革を実行することが不払いを止める力になる」というのが正解です。
また、この他に、今年3月末時点で受信契約を結んでいない世帯・事業所は有料契約対象世帯・事業所の約20%、922万件に上るといわれています。NHKの財政基盤を議論するのであれば、こうした未契約世帯・事業所の問題も検討が必要です。
以上のような立場から、私たちは、NHKに対して、「お隣が払っていないから払わない」という不払いをことさらに強調して責任を視聴者に転嫁するのではなく、信頼失墜の原因を直視して、それを解消するのにふさわしい取り組み(具体的には、番組の事前説明を通常の業務の範囲内とした見解を撤回し、番組の事前説明を禁止する旨をNHK倫理・行動憲章に明記すること)を実行するよう、再度、要望します。
2. これまでNHKは、私たちの再三の質問に対して、「政治の介入によって番組を改編したことは、これまでもなかったし、今後もありえない」という回答を繰り返してきました。しかし、こうした雑駁な回答では、私たちが指摘したNHKの債務不履行は少しも反証できていません。1つの重要な論点を例に挙げて、この点を論証しておきたいと思います。
去る6月3日付けで、当会が橋本会長宛に提出した公開質問書に対して、7月29日付けでNHKから回答が送られてきました。そのなかで、NHKは、「野島につきましては、・・・・・予算説明の際にこの番組についての話が出ることも予想されたため番組を見ておこうと思い、放送総局長の許可を得て試写に同席したものです」と記しています。
しかし、NHKは、VAWW-NET JapanがNHKを相手取って提起した裁判の第5回公判にむけて7月20日付けで提出した準備書面の中で、放送日前日の試写の場で番組変更方針が野島国会担当局長(当時)から永田チーフプロデューサーに伝えられこと、その場で野島氏が変更によって時間が足りないなら、追加できる映像があれば追加し、それでも足りなければ秦教授のインタビューを追加するようにと指示をしたと記載があります。
また、7月25日付け『朝日新聞』の検証記事は、安倍晋三氏と面会後、NHKに戻って試写に立会った野島氏が、2001年1月26日時点の修正バージョンについて、「これでは全然だめだ」と発言したのをきっかけに見直しが始まったこと、その後、野島氏は、慰安婦をビジネスだったことにできないかなどと番組改変について具体的な指示をしたこと、こうした指示は「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」の本に書かれた主張に沿った根本的な修正だったことを生々しく記しています。
こうした資料から、番組制作と無関係な国会担当局長の野島氏が安倍氏と面会した後に番組制作の現場に立ち会い、番組改変の核心に触れる指示を出すなど主導的な役割を果たしたことは明らかです。これでは、野島氏が「試写に同席しただけ」というNHKの回答は虚偽説明も同然です。
私たちの受信料支払い停止運動が、受信料の「不払い」ではなく、「停止」であるゆえんは、双務契約の相手方であるNHKが、このように政治介入に迎合して、公共放送に求められる債務(自立した公正な放送の提供)を履行しなかったことを理由にした「条件付不払い」だという点にあります。また、NHKが、政治介入の温床となる番組の事前説明を「通常の業務」と言ってはばからない現状では、こうした債務不履行が今後も再発することが予見されることも、支払い停止の理由に含まれています。
NHKと視聴者の受信契約が双務契約である以上、一方の当事者が債務を履行しない場合、他方の当事者が債務の履行を一時的に保留することは、民法第533条でも認められた視聴者の正当な抗弁権です。
したがって、私たちは、NHKがこうした債務の双務性、相互依存性を無視し、公共放送の担い手としての自らの債務不履行を棚に上げて、視聴者の債務不履行に対して、一方的に法的手段を講じようとすることに強く抗議します。
以上
〔付記〕
当会は、本日、「NHK新生プランに関する私たちの見解」と題する文書を報道各社に公表しました。その中で、貴職宛に上記1,2の申し入れをしたことを発表すると同時に、受信料の不払いを続けている視聴者に対し、明確な理由を示さない不払いが、受信料で支えられるNHKの公共放送としての基盤を揺るがすマイナスの影響をもたらすことを訴え、当会と共同して、NHK改革を願う建設的な視聴者運動を起こすよう呼びかけたことをお知らせします。
詳細は、別添の報道各社宛て文書をご参照下さい。
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